2022.03.15
博報堂DYグループが推進する広告メディアビジネスのDX「AaaS」では、従来の「広告枠」から広告主の事業貢献である「効果」を売り物としたビジネスへの脱却を推進しています。今回は、メディアの統合評価・運用によるマーケティング効果の最大化を目指すTele-Digi AaaSの進化についての中編です。様々なプレイヤーによって推進しているAaaSですが、今回はグループ会社との連携による広告メディア運用の進化について、博報堂DYメディアパートナーズ統合アカウントプロデュース局の寺田 周平、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム プラットフォームストラテジー本部の伊藤 綾、アイレップ プランニング&クリエイティブUnit の浅田 実季に語ってもらいました。
寺田:
前編では、Tele-Digi AaaSについて開発目線で、KPIの選び方や使い分け、マーケティング構造解析・可視化・最適化サービスであるAnalytics AaaSとの連携についてご紹介しました。中編では、実際現場でメディアマーケティングの最先端を実践している浅田さん、ソリューションスペシャリストである伊藤さんとともに、Tele-Digi AaaSによる運用改善を中心にお話を深めていきたいと思います。
浅田:
株式会社アイレップでテレデジプラニングならびにR&Dに携わっている浅田です。アイレップという会社がデジタル広告、その中でも運用型領域を得意としていることもあり、獲得系指標をKPIに据えたプラニング・運用改善に関する業務が多いですが、直近KPIとして態度変容を扱う事例も増えてきました。そんな中、 Tele-Digi AaaS も様々な活用方法があると感じており、本日はそういったお話しができればと思います。
伊藤:
株式会社デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム Google推進部の伊藤です。私はもともとReach計測ツールであるDARやアドベリフィケーションツールであるIASなど外部ベンダーとの協業や活用支援を行っていまして、3年ほど前から Googleの提供するソリューションの導入支援やそれらをかけ合わせたサービス開発をしています(具体的にはGoogle Marketing PlatformソリューションであるCampaign Manager360やGoogle Analytics・Analytics360、 Display&Video360や、その他Google Cloud Platformソリューションなど)。今日はGoogleを活用した運用改善事例やTele-Digi AaaS協業についてお話します。
寺田:
浅田さんは獲得型から認知型、さらにはそのハイブリッドまで、さまざまな施策立案・PDCAに携わってこられたと思います。率直に、僕らの開発したTele-Digi AaaSの使い心地はいかがでしょうか?
浅田:
Tele-Digi AaaS自体、もちろん今後も社会環境やプラットフォーマー動向の変化に合わせて開発・アップデートは必須ではあるものの、広告効果の測定に関しては必要な機能が一通りそろっており、現時点でかなり使い勝手がよいと感じています。測定可能なKPIは獲得系のWeb CVや予測LTV、中間KPIとしてメディアとの相性のいい指名検索やアプリダウンロード、直接的な行動に加えて態度変容も測ることができるため、ほぼすべての広告主・キャンペーンをカバーできています。
寺田:
開発当初からメディア効果を過小評価しないように網羅的に対応KPIを用意するなど試行錯誤してきた甲斐がありました。Tele-Digi AaaSはじめAaaSソリューションは博報堂DYグループのものですので、運用改善・獲得も得意なアイレップにも積極活用いただけてありがたいです。
浅田:
サービス活用という意味でももちろん連携しています。加えて、アイレップの戦略プラニング・クリエイティブ制作を手掛けるTeam JAZZによる、テレビCM・動画制作ソリューションをTele-Digi AaaSの運用改善のための打ち手としていたり、テレビモニタリング・運用改善ソリューションX2(ダブルスコア)をTV AaaSサービス同様に提供していたり、サービスの相乗効果も生まれています。
寺田:
ありがとうございます。会社間連携の話で言いますと、DACとはAaaSサービスの開発もご一緒してますね。
伊藤:
デジタル×テレビの広告効果を可視化する統合モニタリングソリューション、LiftOne powered by AaaSですね。DACとしてもデジタルとマスを横断したプラニング、バイイング、モニタリングそれぞれの領域で広告の効果を最大化するサービスの開発、提供に努め、企業の統合マーケティング活動の支援に取り組んでいますので、AaaSサービスは私たちの強みにもなっています。
寺田:
博報堂DYグループでもそれぞれ得意領域や成り立ちが異なることを活かし、AaaSサービスのノウハウを昇華・発展させてよりよいものを生み出していく機運がありますね。
伊藤:
ツールとしてGMP・GCPを使う際のサポートはもちろん、 DACと博報堂i-Studioが共同で提供しているRich Creative Promotion Serviceによるクリエイティブ運用改善を Tele-Digi AaaSの運用改善のための打ち手とするなど、アイレップとの間でみられるようなサービスの相乗効果はDACとも起きています。Rich Creative Promotion Serviceでは、 Googleプロダクトの知見・体制に基づき、広告デザインの専門家によるクリエイティブ制作/支援~配信~分析~改善までワンストップで提供することで高速PDCAを実現しています。従来のディスプレイ広告よりも商品やサービスの内容を丁寧に伝えることができ、かつ動画広告よりも予算を抑えることが可能な様々なテンプレートをご用意しているので、ユーザーのエンゲージメント最大化が期待できるサービスです。
浅田:
クリエイティブによる広告効果の改善ですが、マーケティング戦略を実行するためにメディアで届けクリエイティブで動かす、といった考え方や、広告効果の約半分はクリエイティブである、といった調査結果もあるように、クリエイティブは最重要因子の一つだと感じています。
寺田:
Tele-Digi AaaSにおいて、特にテレビについて改善事例の多くはクリエイティブの差し替えによるものです。番組視聴者層や視聴態度によって刺さるメッセージや表現が変わってくるうえに、複数素材接触や総接触回数、競合や関連企業サービスのCM接触によりKPIへのコミット度が変わってくるため、さまざまな変数を考慮したうえで素材差し替えを行っています。
伊藤:
デジタル面でのクリエイティブ運用改善については、動画ではアイレップによる改訂はもちろん、例えばターゲットごと、FQや接触クリエイティブごとの出しわけや強弱・順序ローテーションなど、テレビよりも運用レバーが多いためより柔軟に改善に向けて取り組めています。静止画については Rich Creative Promotion Serviceによる高速PDCAが効果的ですね。
寺田:
Rich Creative Promotion Service自体は、Tele-Digi AaaSと組み合わせる必要は必ずしもありません。データ規制強化の下、クリエイティブによるユーザーコミュニケーションを図りたい、ECなどの自社データ/天気などの外部データを活用したいとお考えの広告主は、単独での活用も検討いただけます。
浅田:
ふと例に出た天気連動についてですが、あるサービスでは特定の気温条件をトリガーにテレデジの出稿を瞬間風速的に強化することでモーメントをとらえる、といったTele-Digi AaaS運用が効果的でした。トリガーという意味ではほかにも広告露出シェアや特定KWの検索量などが該当しますが、期間中の予算配分に自由度を持たせることで生活者モチベーションの高まりに乗り遅れずブーストさせる運用が可能になります。例えばTeam JAZZのクリエイティブ制作ではこうした運用レバーも考慮して多様なクリエイティブを用意しており、Tele-Digi AaaSでの活用も可能です。
寺田:
Tele-Digi AaaSはあらゆるメディア効果を統一KPIで評価・運用しますが、デジタル広告についてはバナー広告と動画広告の重複接触率が小さいことが多いため、テレビCMに加え動画もバナーも両方改善していく必要があります。先ほど、 Rich Creative Promotion Serviceは単独でも使えますと申し上げましたが、Tele-Digi AaaSを使う場合に併用するのはごく自然なことです。
伊藤:
Rich Creative Promotion Serviceは動画も静止画も扱いますが、とりわけ素材を大量に用意しやすい静止画での改善幅が大きくなる傾向にあります。天気や花粉などモーメントを捉えたクリエイティブ生成・配信、ユーザーが広告上で興味のある商品/LPを選択できるインタラクティブなクリエイティブ生成・配信、広告主の1stPartyを含む様々なデータを機械学習させ膨大なクリエイティブを生成・おなじく膨大なマイクロセグメントへの配信など、制作から配信まで自動化し効果を改善し続けるのが強みです。
寺田:
クリエイティブ以外の運用改善の方向性について考えていくにあたり、具体的な事例をいくつかお話しします。例えば、テレビとデジタルを獲得系の中間KPIであるサーチで評価・運用した事例では、テレビCM出稿について成果の良好な平日朝帯やドラマの時間帯に改案する、あるエリアではテレビCMよりも効率のいいデジタル広告へ予算アロケーションをおこなうなど、従来できなかったような運用によりキャンペーン効果は劇的に改善しました。
浅田:
キャンペーン期間中にテレデジ間の予算配分変更ができることは、広告主に柔軟性があることに加え、代理店が行う成果改善施策に期待を持っていただいていることが重要だと思っています。例えば私が担当した、KPIを態度変容、サービス利用意向としたテレデジ運用改善事例では、サービス利用意向が最もコスト効率よく高まるテレデジ統合FQを明らかにし、そのFQ未満の人をできるだけ減らすため統合リーチをKPIとし、テレビ出稿プランを所与としたときのデジタル広告運用を行いました。ターゲティングセグメントにテレビCM除外を設定する、若年層はConnected TVにも配信するなど、そのまま配信し続けるよりも多くのデジタルインクリメンタルリーチを獲得、最終的なサービス利用意向者増につながりました。
伊藤:
Tele-Digi AaaSのKPI計測について、もちろん様々な計測方法がありますが、その1つがGoogleのプライバシーセーフティな分析環境であるAds Data Hubを用いるものです。制約はいくつかあるものの、例えば、テレビCMに3回、デジタル広告に2回当たった人の、サービス利用意向の上昇率は+5.0pt、といった人セグメントベースでのテレデジ統合評価ができます。
浅田:
来店をKPIとする場合でもGoogle Ads Data Hubをはじめとするプラットフォーマーのデータクリーンルームを活用することが少なくないですね。
寺田:
広告にあたって来店したけれども、実はその人は別段広告にあたらなくても来店するはずの人でした、という、来店のベース値除外・リフト効果算出が容易にできるのも利点ですよね。
伊藤:
来店計測ソリューションといえばGoogle Store Visitが有名ですが、前述したAds Data Hubを用いた来店分析や、Campaign Manager360を活用した計測など方法は多数あります。予算やメディアプラン、計測精度など様々な面から採用手法を検討する必要があるでしょう。定常的にメディア出稿を行う事例では、博報堂DYグループのソリューションなどと組み合わせることでテレデジ来店効果を可視化し、来店リフト効率をもとに週次でメディア予算配分変更を行うことで効率を改善し続けるものもあります。
寺田:
様々な計測手法を開発・駆使してTele-Digi AaaSは成り立っています。今後も現場レベルでもしっかりと連携させていただきたいです。
寺田 周平
博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局
AaaSアカウント推進2部
メディアプラナー
伊藤 綾
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
プラットフォームストラテジー本部
第二プラットフォーム推進局
Google推進部
浅田 実季
アイレップ
プランニング&クリエイティブUnit
ストラテジックプランニングDiv
デジマス・メディアプランニンググループ
ストラテジックプランナー