2024.10.25

博報堂DYメディアパートナーズのAaaS×日テレアドリーチマックスが描く
新しいテレビマーケティング
~日本初の地上波DSP「スグリー」を解き明かす~

広告メディアとしてのテレビCMは今後どのように進化していくのか。博報堂DYメディアパートナーズでTV AaaS Lab編集長を務める内藤匠哉氏と、日本テレビアドリーチマックス部の海老原敬吾氏が対談し、テレビ広告の現状と、現在進行中の画期的な取り組みの全容を明かした。
内藤 匠哉氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
AaaSビジネス戦略局 戦略二部 部長/TV AaaS Lab編集長
海老原 敬吾氏
日本テレビ放送網株式会社
営業局 営業戦略センター アドリーチマックス部

新規にテレビ出稿する広告主が増加中

「テレビメディアの“価値” は、ブロードリーチ・スピードリーチに加えて、厳格な考査による信頼性です。博報堂DYメディアパートナーズの研究による地上波テレビの広告分析を見ると、新規でテレビ広告を出稿した企業数はコロナ禍を経て増加傾向にあります」
新規広告主の継続率を調べると、半数以上が1年で出稿をとりやめているが、継続年数が増えるほど翌年継続率が上がっていると博報堂DYメディアパートナーズ 内藤匠哉氏は説明する。地上波テレビが継続的なマーケティング手法として期待されていることのあらわれだろう。
新規テレビ出稿広告主数の推移(3地区平均)
新規テレビ出稿広告主の翌年継続率(2018-2022年度)
出典:ビデオリサーチ テレビ広告統計(2014-2023)
デジタル広告では2010年頃から運用型が主流となり、地上波テレビ広告についても、2019年ぐらいから「運用型テレビ広告」が登場し、行動指標とマーケティング指標への貢献度分析が可能となった。テレビ広告にも、地上波とOTT広告を統合した可視化や最適化が求められている。
「日本は、地上波のメディアパワーが強く、テレビ広告利活用のニーズも非常に多い。ただ、ここ10年でデジタル由来メディアへの接触時間構成比は大きく伸び、この差は若年層ではさらに顕著です。デジタル広告費は急上昇を続け、2025年にはテレビ広告の倍になると予想されていますが、そのうち動画広告は7,000億円弱と、テレビ広告の半分以下の規模。まだ動画広告においては地上波テレビ広告の活用が重要なのです。デジタル広告は管理画面があり、運用担当者とデータサイエンスなどのシナジーで、より効果的なマーケティングを展開し、事業の成長を加速できる点が評価されています。生活者のタッチポイントが複雑化する中、広告主の皆さんは地上波やTVer、YouTubeなどを統合的に連携させながら、動画広告を運用していきたいはずです」(内藤氏)
しかし、買付指標や評価指標が地上波テレビとデジタル動画広告で分断されているという課題があるのも事実だ。デジタル広告のレポーティングに慣れた広告主は、視聴率のパーセント指標に戸惑うことも考えられる。テレビ広告の効果測定に対して、昔からいわれている認知・リーチに加えてデジタル広告の行動指標への最適化が求められている。

次世代のテレビ広告に求められるのは
見える化・予測できる化・直せる化

地上波テレビでは広告効果の可視化や最適化は難しいといわれてきたが、今はテレビ広告も効果の可視化が一般的となり、行動指標などのKPI効率アップに向けた最適化・直せる化が可能な世界への取り組みを進めているという。
「広告主の皆様から期待されているのは、3つのアップデート・次世代化だと認識しています。①“見える化”、②“予測できる化”、そして③“直せる化”で、昨今はテレビ広告とデジタル広告の統合的な運用が求められています。さらに新規の広告主様にとって、初めてでも取り組みやすい地上波広告であることも重要です。そこで我々は、テレビ広告をもっと使いやすく、気持ちよく出稿できる環境を広告主の皆様に提供する取り組みを日本テレビさんはじめ全国の放送局の皆さんと進めています」(内藤氏)
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 戦略二部 部長/TV AaaS Lab編集長 内藤 匠哉 氏

オンエア20分前の素材変更も可能
画期的なメリット満載の「スグリー」

日本テレビでは時代に合った新たなテレビ広告の設計を行うプロジェクト「アドリーチマックス(以下AdRM)」で、デジタル広告で用いられるアドテクノロジー(配信・効果測定技術)をテレビ広告にも適用するプラットフォームの開発を進めている。その中で生まれたのが2025年ローンチ予定の「スグリー」と名付けられたWebアプリケーションだ。開発の根底には、貴重な宣伝費を投下した広告枠をできる限り有効に活用してほしいという思いがあると日本テレビ海老原敬吾氏は語る。
日本テレビ放送網株式会社 営業局 営業戦略センター アドリーチマックス部 海老原 敬吾 氏
「スグリーでは現行のタイム、スポットにおいても今までの商習慣や買い方はそのままに、オンエア20分前までの素材変更を可能にいたします。また、インプレッションを取引指標にした新しい商品メニューも開発中です。こちらは最速放送15分後のレポート機能など、放送期間中のインプレッションの獲得状況を確認することができます。スグリーによって現行商品でも新商品でも今までより速いPDCAサイクルを可能にしていきたいと考えています。このことにより、他媒体施策やビジネス状況と連携し、より一体的でダイレクトなマーケティング戦略を選択することが可能になります。
また、新商品に関しては航空券の購入に似たイメージでスグリーからオンラインでの発注ができます。明日から放送したい!となった場合でも、スグリー上で出稿可能量を確認することができ、そのまま出稿枠を確保することも可能になります。より直前の出稿ニーズに対応出来ればと考えています。
バイイング指標としては、インプレッションを採用することで、デジタル媒体との比較検討がしやすくなると考えています。換算方法はCM放送の毎分時点視聴率をベースにしており、性・年齢別のターゲットインプレッションでの取引も実装する予定です」(海老原氏)
CM素材がオンエア直前まで選択できるようになることでデジタル広告に近い買い方ができ、クリエイティブの可能性は広がる。たとえばタイムリー性のあるビジネス展開や在庫状況による判断で臨機応変にCM内容を変更したり、天候に応じて差し替えたりすることも可能だ。スポーツなどの試合展開に応じてリアルタイムで活躍した選手を使用した広告を発信すれば、コンテンツに没入した状態の視聴者に企業情報がすっと入ってくることだろう。スグリーは「今見ることで得する情報を得られ、それを訴求できる」強い広告媒体となる可能性を大いに秘めている。

プラニング・バイイング・モニタリングの領域で
3つのシナジーを生み出す「AaaS」への期待

プラニング・バイイング・
モニタリングの領域で3つのシナジーを
生み出す「AaaS」への期待

一方の博報堂DYグループは、「AaaS」という広告メディアビジネスの次世代型モデルを提唱している。これは「枠から効果へ」をコンセプトに、テレデジの動画コミュニケーションを横断して常時接続型で生活者データ・広告主データ・メディアデータを統合し、管理運用と最適化を行うダッシュボード提供やメディア運用コンサルティングなどのサービスを提供するものだ。AaaSはスグリーとのシナジーを生むものだと内藤氏は強調する。
「プラニング・バイイング・モニタリングの領域でそれぞれシナジーがあります。まずはプラニング領域。日本テレビさんのラインアップとして、タイム・スポット・SAS・TVerなどに加えてAdRM領域の商品が追加されると、どれを選ぼうか迷うかもしれません。他局との比較検討や、TVerなら他動画メディアとの比較検討も必要になる。そこで、AaaSなどの広告会社のサービスと連携するメリットがあると考えます。
スグリーの場合、その名の通りスグの登録、スグのプラニング、スグのバイイングが可能なことが最大の差別化ポイント。テレビ出稿の経験がない広告主や、急な買付ニーズには大きな魅力になるはずですし、デジタル広告は18歳未満のターゲティングができないため、若年層に特化したバイイングができるのも強みになります。モニタリングにおいても、スグリーが無料提供するインプレッションとリーチのデータを、AaaS経由で広告主のKPIデータや他メディアへの出稿データも統合することで、より精度の高い広告効果のモニタリング環境が実現できます」
スグリーでは、モニタリング画面を広告会社向けに無料で使用可能にする予定だ。海老原氏によれば、「その上で放送実績を連携するAPIなどを開発中で、この要素が連携可能なだけでも、『CMが流れた後の効果』の可視化に繋がると考えている」という。内藤氏も「無料でのモニタリングはデジタル広告の管理画面に慣れた広告主の皆さんには重宝されそうだ」と語った。

AaaSこそ「直せる、増やせる」の最大化ができる

AaaSこそ「直せる、増やせる」の
最大化ができる

もう一点のバイイングについても言及する。
「広告主のKPIデータと接続しているからこそ、キャンペーン期間中に勝ち素材がわかったり、不足が判明したりする。従来では対策に数日かかっていたものをスグリーなら瞬時に対応可能です。メディアデータから広告主データまで一気通貫した統合モニタリング環境を常時接続できるAaaSの基盤こそ、スグリーの『スグ直せる・スグ増やせる』を最大限活用できると考えています」(内藤氏)
海老原氏も、「“変えられない期間が長い”ことが地上波広告の一番の課題だと感じていた。あらゆるサービスがより柔軟になり、目まぐるしく何かが起こる今の社会の中では、変えられないことをデメリットに感じる広告主様がいるだろうと考えた。放送局として変えられるシステムを作り、その先にAaaSのようなサービスがあることで、AdRMの良さを引き出してくれるのではないか」と期待を込める。
それを受けて、内藤氏は「来年以降、素材差し替えをはじめとして地上波テレビにおいて『できること』が増える。でも、それだけではテレビの価値は高まらない。広告主の皆さんをはじめとしたコミュニケーション戦略を担うマーケターや、素材制作を担うクリエイターの皆さんがそのスペックをフル活用して戦略やクリエイティブをアップデートすることで、はじめてテレビの価値が高まると考えます。メディアプランナーやバイイングの担当者だけでなく、マーケティング戦略やクリエイティブ制作を担う方たちにもAaaSで培ってきた豊富なデータ基盤やAdRMをフルに活用できる環境を提供することで、テレビ広告のポテンシャルをもっと引き出したい。テレビのアップデートをマーケティングコミュニケーションに関わる全てのプレイヤーと共創型で進められれば嬉しい」と締めくくった。
■プロフィール
内藤 匠哉 氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
AaaSビジネス戦略局 戦略二部 部長/TV AaaS Lab編集長
2006年博報堂DYメディアパートナーズ入社。雑誌・プラニング・テレビタイムなどメディア領域での経験を経て、博報堂DYグループのメディアDXソリューション「AaaS」の提案推進に従事。2022年度よりテレビビジネスの価値向上を目指し、放送局とのテレビビジネスDX、次世代化などの共創プロジェクトを担当。
海老原 敬吾 氏
日本テレビ放送網株式会社
営業局 営業戦略センター アドリーチマックス部
2016年日本テレビ入社。スポット/SASのセールスを担当では、広告主300社延べ3300件のスポット作案、スポットセールス全体の在庫管理を経験。
2023年営業局アドリーチマックス部の立ち上げメンバーとしてアドリーチマックスプロジェクトに参画
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