コラム
メディアガイド
生活者は本当に「テレビ」を見なくなった?
内藤匠哉博報堂DYメディアパートナーズ 動画ビジネス局テレビ戦略部
【広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2017」リレーコラム】
マスメディアからインターネット、アウトドアまで、広告メディアについてのあらゆるデータを収録した書籍『広告ビジネスに関わる人のためのメディアガイド2017』(博報堂DYメディアパートナーズ編)が、4月27日から全国の有力書店・オンライン書店で順次販売されます。「メディアガイド」は、博報堂DYグループの社内向け冊子を2015年に初めて書籍化したもの。2017年版は、デジタル領域の新しい用語やデータに対応し大幅アップデートしています。コラムでは、本書の編集に関わった博報堂DYメディアパートナーズ社員が、各メディアのトピックを紹介します。
■「テレビ」の定義は何ですか
「テレビを見なくなった」「若者のテレビ離れ」というニュースや生活者の声をよく耳にします。この文脈の時に、みなさんがイメージする「テレビ」は何を意味しているのでしょうか。
テレビ受像機やテレビ画面そのもの? テレビ局? テレビ番組? もし、番組だとしたら、タイムシフト視聴や、インターネット上にアップロードされている「テレビ番組」をスマートデバイスで見る場合はどうでしょうか。
NHKの放送記念日特集『今 テレビはどう見られているか』(3月22日放送)という番組の中で、「テレビはほとんど見ない」と答えている若者が、スマホを通してネットで見ている「動画」はほとんど「テレビ番組」だったというシーンがありました。
また、『拡張するテレビ』(境治著・宣伝会議)という本で触れられていますが、テレビ局がつくった「テレビ番組」は、放送だけでなくインターネット経由でも視聴可能になったことで、伝送路が増え、スマホやタブレットなどの普及により視聴デバイスが増え、大容量レコーダーの普及やTVerなどのサービスの普及で視聴方法が増え、さらにTwitterなどを使ったテレビ番組の楽しみ方までも増えてきました。
つまり、若者も、生活者も、テレビを見なくなったのではなく、テレビ番組をリアルタイム編成でテレビ受像機を通して見る機会が少なくなっただけなのです。ほとんどの回でリアルタイムよりタイムシフト視聴率が高く、最終回の総合視聴率が33.1%、見逃し配信が2000万再生、YouTubeの関連動画が1億回以上再生という2016年を代表するドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が、その象徴です。
■テレビ局との深い座組みが重要に
一方で、今までのテレビ広告は、主にテレビ受像機を通してリアルタイムで視聴されている番組と一緒に放送されるCMをメインにプラニングされてきました。テレビ局の編成というのは本当によく出来ています。私自身そうなのですが、たとえ全録機があっても、リアルタイム視聴が大きく減少することはないと思いますが、ドラマやアニメ、一部のバラエティなどは、「タイムシフト視聴」「TVerなどの見逃し視聴」も意識した新たなプラニングが求められていると感じています。
今後は、番組自体が企業のブランディングになっている1社提供番組や、番組本編とのタイアップ企画、出演者やセットを使ったインフォマーシャル、ローカル局との地元密着企画といった以前からある手法はもちろん、放送と見逃し配信を連動させた企画、テレビ局のYouTubeやLINE、Instagramなどのアカウントとタイアップした企画、リアルタイム視聴者しか参加できない企画など、生活者の多様なテレビ番組の楽しみ方に寄り添った新たな「テレビ広告」を推進していきたいと考えています。
◆AdverTimes「メディアガイド2017」リレーコラムより転載
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