コネクテッドTVの急速な普及を受け、マーケティング上の動画コミュニケーションにおいてテレビ画面をどう活用するかは大きなテーマになっている。地上波CM、CTV広告それぞれの強みを生かして、広告効果を最大化していくためにはどうすればよいのか。ビデオリサーチ テレビ・動画事業ユニット 板東大介氏、博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 内藤匠哉氏、総合アカウントプロデュース局 大竹祥昭氏に話を伺った。
板東 大介氏
株式会社ビデオリサーチ
テレビ・動画事業ユニット ユニットマネージャー
内藤 匠哉氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
AaaSビジネス戦略局 戦略二部 部長
TV AaaS Lab編集長
大竹 祥昭氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 AaaS推進三部 部長
急速に生活者に浸透するコネクテッドTV
急速に生活者に浸透する
コネクテッドTV
昨今コネクテッドTV(以下CTV)という言葉をよく聞くようになりました。生活者のテレビ視聴傾向の変化について、教えてください。
板東:
コロナ禍による生活者のデジタルシフトにより、地上波のリアルタイム視聴率は低下傾向にあります。しかし、弊社のテレビ視聴率調査を見ると、実はテレビデバイスの稼働状況は2015年から直近2022年まで横ばいとなっています。つまりテレビデバイスの利用そのものは変わっていない、ということです。その理由の鍵を握るのが、CTVです。 CTVとはネット接続されたテレビのこと。放送コンテンツだけでなく配信コンテンツの視聴も可能です。コロナ禍で外出の機会が減少した結果、自宅のテレビをネットにつなぐ習慣が浸透、CTVの普及率は加速度的に上昇を続けており、直近では関東地区の視聴率調査協力世帯の7割弱が何かしらの形でCTVを利用できる環境になっています。このような状況を受け、弊社のテレビ視聴率調査パネルでも、調査の測定領域を拡張し、テレビデバイスやPC・モバイル端末での動画視聴を測定できるサービスの準備を進めております。準備段階の研究データを基に、ターゲットごとのCTVの普及や利用の状況を見てみると、例えばチャイルド層、ティーン層、その親世代にあたる M2・F2層(35~49歳男女)はすでに8割前後がCTV利用可能な環境にあることがわかりました。また、個人全体で見ていくと、4人に1人が1週間で1分以上、CTVを実際に利用しているということも明らかになりました。また、動画配信プラットフォームの利用状況をデバイス別に確認すると、スマートフォンやタブレットでの利用は2020年のコロナ禍でいったん落ち着いて高止まりとなっているのに対して、テレビデバイスの利用は伸び続けており、タッチポイントとしての重要性が高まっていることがわかります。
内藤:
私自身もTVerやAmazon Prime Video、Netflixはよくテレビ画面で見ていますし、小学生の娘はテレビをつけるとYouTubeを見ることが多いですね。
板東:
人気のテレビドラマでも配信での視聴割合が高くなっているんです。ドラマによっては、配信だけで見る人が1割近いものもありますし、本放送と配信を分けながら見るという人まで含めると2割近くまで達しているものもありました。
内藤:
生活者がテレビスクリーンに映すコンテンツは、今や地上波だけではありません。地上波の放送コンテンツとデジタルの配信コンテンツをテレビのスクリーンの中で自由に行き来することが当たり前になってきています。つまり、テレビ視聴の定義が変わっているということです。
テレビ画面の広告効果の高さに注目
CTVの普及によって、地上波以外のコンテンツ視聴サービスが広がり、生活者のテレビデバイスの視聴行動が複雑化してきたということですね。ここまで、テレビ画面をめぐる環境変化について議論してきましたが、マーケティングにおいてテレビ画面に今注目すべき理由を、もう少し掘り下げてお伺いできますか。
内藤:
特にCTVへの広告配信を活用するべき理由は3つあります。1つ目は基本的に大画面なので、訴求内容が伝わりやすいことが考えられます。2つ目は広告に対するストレスが少ないこと。CMチャンスが存在することが当たり前の地上波テレビに近い視聴環境のため、広告に対するストレスが少なく、視聴完了率が高くなります。3つ目が能動視聴。生活者が自身で視聴内容を意識的に選択しているということですね。弊社の過去の調査結果では、広告配信におけるモバイル面とCTV面の視聴完了率はCTV面のほうが160%も高いという結果が実際に出ています。また、テレビ画面の高い視認性ゆえに、CTVのほうがスマートデバイスよりも認知効率が約3倍も高く、地上波とほぼ同等であることが確認できています。また、テレビ画面とスマートデバイス画面の認知や購買のリフト効果をシミュレーションで比較すると、テレビ画面のほうが認知・購買ともにコスト効率が3倍近く高いこともわかりました。
(左から)ビデオリサーチ テレビ・動画事業ユニット 板東大介氏
博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 内藤匠哉氏
博報堂DYメディアパートナーズ 総合アカウントプロデュース局 大竹祥昭氏
TVCMとCTV広告の統合運用を実現
広告主の立場では、CTV広告を含めたメディアプラニングを実行する上で、どのような課題感があるのでしょうか。
内藤:
地上波CMとデジタル広告、そしてデジタル広告の中でもモバイル面とCTV面への配信など、複数媒体を扱うのが、広告主の皆様にとって当たり前になりました。そこで、それらの媒体をどう統合してプラニングしていくか、デバイスを横断したKPIをどのように設定するかに悩まれる広告主様が多いと感じています。例えば、地上波CMはGRP/PRP、CTV広告を含むデジタル広告はインプレッションというように評価・取引指標が違います。それらを統合してプラニング・モニタリング・改善施策につなげることはこれまで難しいとされてきました。
そのような課題にこたえる形で開発したのが「Tele-Digi AaaS for CTV」です。地上波CMとCTV広告の配信を、ターゲットインプレッションを共通指標として統合モニタリングできる環境を提供しています。テレビデバイス上でのターゲット到達状況をクイックに把握できるため、キャンペーン期間中に改善を図ることが可能です。
大竹:
私自身、広告主様のメディアプラニングに携わらせていただく中で、広告効果の可視化の重要性が増していることを実感しています。これまで媒体単体では可能だった態度変容効果やサイト来訪効果など様々なKPIでの効果の可視化を、今度は媒体横断でできないか、というニーズが生まれてきているのです。
この評価には量と質の2方向があると考えています。まず「量の評価」とは、「Tele-Digi AaaS for CTV」のように、広告配信した量を統合指標で評価していくということですね。地上波CMのみの指標だったGRP、PRPという出稿量の指標を、ターゲットに対してどれくらい広告が掲載されたかというインプレッションの概念に戻して管理することで、地上波CMとCTVを横断してPDCAを回せるようになります。もう一点のポイントは、広告の質的な評価です。地上波CMではCVリフト効果を見ることができるのに対し、これまでのCTV広告では接触/非接触の判定が行えなかったため、CTV広告ではリフト効果は可視化できない状態でした。しかし、テクノロジーの進化によりCTVでも接触/非接触の判定ができるようになってきており、今までできなかったリフト効果の可視化が実現しつつあるのは非常に大きなポイントですね。媒体を横断してリフト効果を知ることができれば、各メディアにどの程度配信するか、メディア投資のPDCAを回すことが可能になります。
内藤:
CTV領域を含め、媒体を横断した効果の可視化・PDCA環境の構築を進めていくことが、広告主様のマーケティング効果の最大化につながっていくと思っております。博報堂DYグループのAaaSでは、CTV広告を効果的に活用していくためのソリューションを広告主様のニーズに合わせてご提供しておりますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
広告を配信できるデバイスやプラットフォームが多様化したことで、より効果的な広告展開が可能になったといえる。その分マーケティングの最適化が難しくなっていることも確かだが、博報堂DYグループによる「Tele-Digi AaaS for CTV」の登場は、新時代のCTV広告運用の指針と可能性を秘めているといえそうだ。
※「日経クロストレンド Special」2023年9月20日に公開掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP