コラム
「デジタル革命が創るスポーツ観戦の未来とは」~アスリートイメージ評価調査2023より~
COLUMNS

デジタル技術の進化が、スポーツ観戦の未来を塗り替えつつあります。
VR、MR、XRの導入により、自宅でのリアルな観戦体験が可能になりつつあります。スポーツ中継はデジタル動画配信へと移行し、詳細なデータ分析が実現。また若年層を中心に動画配信サービスの利用が拡大し、複数デバイスでの視聴が一般的になりつつあります。そんなメディアの進化と未来について、「アスリートイメージ評価調査」の調査結果をベースに、博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局の武方浩紀が分析しました。

目の前で、スポーツ・アスリートがプレーをしています。暖かい陽射し、青い芝を近くに感じ、プレーへの一人一人の歓声が、そこかしこから聞こえてきます。まるで、自分が会場で観戦しているような空間。それが、自宅内で再現されています。大手通信企業などが、研究開発を競って進めているVR、MR、XRが可能とするスポーツ中継の未来になります。
現在、スポーツ中継が放送からデジタル動画配信へと広がりつつあります。映像や音声がデジタル化されることによって、スポーツ・アスリートのプレー、試合会場の天候、観客の声など実に様々なものがデータとしてアーカイブされて、クラウド上に蓄積されていきます。必然的に、大量なデータによる、これまでにはない詳細分析が行えるようになります。

例えば、スーパーアスリートが超人的である理由が走るスピード、跳躍する距離などといった身体的データにより可視化され、明らかとなります。将来的には、冒頭のようなリアルタイムで、立体的なバーチャルで再現されたデジタル動画配信サービスが実現するのかもしれません。
そうした未来への動きが加速している中、博報堂DYメディアパートナーズが博報堂DYスポーツマーケティング、データスタジアムと共同で行っている「アスリートイメージ評価調査」の調査結果をもとに、スポーツ動画配信サービスの利用状況とVR観戦の可能性について検討してみました。
その結果、
・現状のスポーツ中継動画配信は若年層を惹きつけていること
・VR観戦意向は野球やサッカーなどで高く、家庭での視聴意向があること
の2つのことが分かりました。

若年層を惹きつけるスポーツ中継動画配信

まず、スポーツ中継動画配信が若年層を惹きつけていることについて紹介します。
スポーツ中継の動画配信サービス利用経験を見てみましょう。
男女15~69才の利用経験は4割以上、層別では男性10代、男性20代が6割以上の利用経験と全層で最も高くなりました。逆に利用経験4割以下の低い層は、女性30代、50代、60代および男性60代と、比較的年齢が高くなりました。性別でも男性女性ともに、60代が最も低く、60代より若い層での利用経験が高くなっています。
若年層を中心とする、一定量のコアファンが存在しているのではないでしょうか。

では、スポーツ中継動画はどのようなデバイスで視聴されているのでしょうか。
調査ではテレビとパソコンからの視聴が5割以上と多くなりました。またスマートフォンは約4割と複数デバイスを使い分けているようです。

さらに、スポーツ中継動画配信サービスの利用者の、サービス別視聴ニーズを調べてみました。
動画配信サービスの利用意向は「広告が流れる、無料サービス」を利用したいが最多と、広告モデルへの期待感が明らかになりました。但し、「広告が流れない、無料サービス」の利用意向もあり、広告以外の新しいマネタイズ方法を考えることも必要なのかもしれません。

VR観戦は、家庭での視聴意向が最多

次に、スポーツ中継のVRに関する調査結果をご紹介します。
競技ごとにVR観戦意向を聞いてみました。調査で提示した59競技のいずれかを観戦したいと答えた人は5割以上となりました。個別競技別では、野球、サッカー、フィギュアスケート、スキー/スノーボードなどが上位で、フィギュアスケートでは女性が特に高くなりました。そもそものコアファンの影響もあるかもしれません。

VR観戦をしたい場所について聞くと、「家庭」が最多。「映画館」「パブリックビューイング」が約2割と一定量のニーズがありそうです。

また、スポーツをVR観戦するための利用料は、2000円未満までの回答合計が約4割にのぼるのと同時に、「有料なら観戦しない」という回答も半数にのぼっており、個人の価値観が値段に影響していそうです。

更なるデジタル技術の進化によって、体験型メディアが進化する

今回の調査により、以下のことが見えてきました。
・スポーツ中継動画配信サービスが、若年層を惹きつけている。
・視聴するデバイスは複数にわたり、テレビとPC・スマートフォンが使い分けられている。
・視聴したいサービスとして、広告付き無料サービスが最多である。
・VR観戦意向は野球、サッカー、フィギュアなどが高く、競技別で違いがある。
・VR観戦をしたい場所は「家庭」が最多である。

今後、VR体験を広めるべく、様々な実証実験が行われていくと考えています。
広告会社としても、新規事業開発のひとつとして、スポーツ中継動画配信サービスの未来を検討する時ではないでしょうか。生活者は、若年層を中心としてスポーツ中継動画配信サービスを利用しており、複数デバイスを駆使しています。広告付きの無料サービスへの期待感が高いことから、未来のVR体験にも広告ビジネスを軸とした無料サービスを求めていくのではないでしょうか。
更なるデジタル技術の進歩によって、視聴型から体験型メディアへの進化が起ころうとしているスポーツ中継動画配信サービス。
広告に関しても、体験型へのアップデートが必要となるのではないでしょうか。

【調査概要】
調査方法:Web調査
調査地区:首都圏+京阪神圏
(東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県/京都府/大阪府/兵庫県/奈良県)
調査対象者:対象エリアに在住の15~69歳の男女
有効回収サンプル数:600サンプル
調査期間:2023年10月/2023年12月


武方 浩紀
博報堂DYメディアパートナーズ
ナレッジイノベーション局 
1995年博報堂入社・初任配属はイベント/展示会などを扱う事業本部。
2004年博報堂DYメディアパートナーズへ。メディアマーケティング局兼ラジオ局複属。
入社以来、メディア・コンテンツの再価値化などに従事。現在はナレッジイノベーション局にてメディア・コンテンツDX情報分析を担当

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
PAGE TOP