コラム
団塊ジュニアを語る・前編
~生活、購買、メディア接触 テレビもデジタルメディアも自在に使う様子が浮き彫りに
COLUMNS

Z世代、α世代と、次代の消費を担う若年層に注目が集まっていますが、一方で上の世代に目を向けると、人口800万人超の団塊ジュニア世代は大きな顧客層といえます。そのボリュームゆえに、受験戦争や就職氷河期といったワードでひと括りに表現されてきましたが、果たして彼らは“ひとつの塊”と括れるのでしょうか?

そんな問いをもって、博報堂DYメディアパートナーズでは団塊ジュニア世代当事者の武方浩紀と大野光貴を中心に、団塊ジュニア世代の意識調査を行いました。本記事では前編・後編に分けて、生活や購買について、また少し先の未来についての意識や価値観を掘り下げていきます。

前編:団塊ジュニアの購買とメディア接触 武方浩紀(博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局)
後編:団塊ジュニアの過去・現在・未来 大野光貴(博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局)
インタビュアー 新美妙子(博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局)

節約しつつ、今を楽しむためにお金を使う

新美
今回注目したのは、団塊ジュニア世代です。戦後の第一次ベビーブームに生まれた 人口ボリュームゾーンである 団塊世代(1947~1949年生まれ)の、子ども世代にあたりますね。年代としては1971~1974年生まれで、2024年現在で50代前半、人数にすると800万人を超えています。

今回は、自身が団塊ジュニア世代である2人が担当した調査をもとに、その意識をひも解いていきたいと思います。先に考察のまとめを提示すると、次のようなことが浮かび上がってきました。

新美
前編では武方さんから、団塊ジュニアの生活や購買に関する調査結果をレポートしてもらいます。

(調査設計)

武方
団塊ジュニアの購買実態調査は、購買意識や生活意識など幅広い質問を設定しました。まず生活意識としては、大きく4つに分けています。自分中心の意識、倹約意識、環境、健康という4つの観点で質問を設計しました。

武方
団塊ジュニアのイメージは、人数が多いために受験戦争が厳しいとか、就職氷河期とか、ネガティブに語られることが多かったかなと思います。ですが、今回の調査からは、予想以上にポジティブな姿を捉えることができました。全体として、アクティブな意識の強さが見えてきました。

まず自分中心の意識としてもっとも高かったのは「今の生活を楽しむためにお金を使う」ことでした。
倹約意識に関しては、おそらく他の世代も共通しているかと思いますが、金利が低くても安定性を求める志向。環境も同様に、省エネなどへの意識が高く出ています。健康に関しては、体臭などエチケットを気にする傾向が高く、親や子ども、仕事や遊びなどで人と関わるからこその観点かと考えています。

新美
節約しつつ、今の生活を上手に楽しんでいる感じですね。また、健康に関しては総じて高いスコアですが、武方さんが指摘したように、アクティブだから気を付けている様子がうかがえます。

テレビや飲食店、ショッピング 、ドライブなど多様な自由時間

新美
では、どんなふうに自由時間を過ごしているのでしょうか?

武方
自由時間の消費では、トップがリアルタイムでテレビを見ることで50.3%、録画番組の視聴も36.5%で3位でした。団塊ジュニアは生まれたときからカラーテレビが家にあり、テレビとともに育った世代ともいえるので、テレビとの関係は密接ですね。スマホなどで動画配信サービスを利用するのも5位で、映像を楽しむことの延長線上にあるのかなと思います。

一方、飲食店に行くことが4位で33.7%、ほかにもショッピングやドライブ、小旅行などのレジャー、友人・知人と遊ぶといった項目も20~30%となり、屋外の楽しみもたくさん挙がりました。

新美
人によっては屋内中心の方もいるでしょうが、飲食店やレジャーなど外出を楽しむのは、昨年や一昨年より増えているかもしれないですね。ご自身の実感としてはどうですか?

武方
個人としては、屋内も屋外も両方楽しんでいますね。この調査結果にも納得ですし、確かにた屋外での楽しみは昨年より増えていると思います。また、見逃し視聴の「TVer」やその他の動画サービスも便利なので、スキマ時間にもちょうどいいです。

新美
この調査ではスマホについても細かく聞いていますよね。メッセンジャーアプリやSNSの利用は、つまり人との交流に使っているということかな、と。

武方
そうですね。また、日記代わりに、SNSに近況を書くような使い方も浸透していると思います。

自分が「いい」と思えば高くても買う

新美
次に、団塊ジュニアの購買実態について見てみましょう。こちらも、先ほどと同様に「自分中心、倹約、環境、健康」の観点で質問しています。

武方
生活意識や自由時間の過ごし方からも感じられたことですが、購買に関しても、自分の軸が明確な様子がわかりました。「自分がいいと思えば高くても買う」人が半数近く、また「流行に左右されない、長年使えるものを買う」人は8割近くに上っており、象徴的です。

環境の観点からも、安さで選んですぐ使えなくなったりするより、納得できる良質なものを長く使いたいという意識がうかがえます。

新美
健康においても、「値段が高くても健康に良いものを買っている」が2位になっていますね。購買に関して、団塊ジュニア当事者の視点だとどうですか?

武方
高いスコアが出ているものは、いずれも同感ですね。私も、たとえば以前より地球環境に配慮した商品を選んだり、フェアトレードかどうかといった社会的道義を意識したりするようになっています。また、最近少し腰痛気味なので(笑)、健康意識にもとづく消費の傾向にもうなずけます。

新美
私は団塊ジュニアより上のバブル世代にあたりますが、この購買意識には私もどれも共感するんです。少し思ったのは、「流行に左右されない」などは団塊ジュニアだからというより、年齢を重ねると自分の好みの基準がわかってくるからかな、と。

武方
それも、もちろんありそうですね。
団塊ジュニアだと、50年のいろいろな体験や取捨選択の積み重ねで今の好みの軸ができあがっているので、その点では若い世代よりも個々人がはっきりしているといえそうです。

新美
また、「できるだけ人とは違うモノを買っている」が3割弱というのも興味深いです。自分の軸を持ちつつ、人とは差別化したい意識もあるのですね。

そもそも団塊ジュニアのボリュームが大きいだけに、たとえば人と持ち物が重なったりすることも多かったのかも。だから、「人と同じでいたくない」という気持ちが生まれた可能性もあるのかなと思いました。

オフラインとオンラインを行き来して購買を検討

新美
団塊ジュニアの購買で注目したいのは、購買前に口コミをチェックする行動がかなり浸透していることですね。「購入前に使用者の感想などを調べる」人が6割近くになっていました。もちろん身の回りの人に聞くこともあるでしょうが、ECサイトのレビューやSNSなどで確認している様子が浮かび上がってきます。

武方
まさに、その通りだと思います。私たち団塊ジュニアが社会に出てしばらくして、テレビCMで「続きはウェブで」とWebへの誘導がされるようになったと思います。SNSなどで口コミをチェックするのは自然な行為になっていますよね。

新美
今回、最近1年間で買ったものや、どこで買ったかなども聞いていますよね。どんな結果が得られましたか?

武方
まず購買の場所でいうと、オンラインが想定以上に大きかったのが意外でした。商品やサービスのカテゴリによって多少は違いますが、平均すると、総合オンラインショッピングサイトを使った人が全体の27%で、メーカーの直販サイトやその他のECサイト・アプリなどを含めたオンライン全体だと40%となりました。

一方、リアル店舗は量販店や直販店、ドラッグストアやスーパーなど含めて6割程度ですね。全体を俯瞰すると、総合オンラインショッピングサイトも複数あるので、さまざまなチャネルを商品やそのときの利便性に合わせて使っている様子があります。

新美
直近では、コロナ禍による外出制限の影響でオンラインが増えた流れもあったと思いますが、どうでしょうか?

武方
はい、オフラインからオンラインへのシフトが進み、それが定着したのが現状だと考えています。私自身もオンラインショッピング利用が増えただけでなく、以前は本が中心だったのが、文具や食品など購入品の幅も広がりましたね。

新美
もう若い人向けだけではなく、団塊ジュニア以上の購買でもオンライン・オフラインを問わずコミュニケーションできる体制を整えないといけないですね。

リアル店舗への誘導は、テレビもネットも同程度

新美
購入ファネルのどの段階でどんなメディア接触があったかも調査しました。こちらはどうでしたか?

武方
認知や興味喚起の段階は、やはりテレビが主でしたが、2位以下はポータルサイトや検索サイト、動画投稿サイトなどデジタルが占めていました。先ほど紹介した自由時間の過ごし方や購買チャネルなどを踏まえると、テレビをきっかけにしながら、興味を持ったりさらに口コミを調べたりといった部分でデジタルにつながっていく、ひとつの公式が確立している世代のように思えますね。

新美
ここではどんな発見がありましたか?

武方
さらに行動別の参照メディアも聞いたのですが、リアル店舗に足を運ぶきっかけになった参照メディアとして、上位からほぼ同じ数字で検索サイト、ポータルサイト、テレビが上がっていました。デジタルとテレビで接触した情報が、来店を後押ししているわけですね。

正直、デジタル接触がここまでテレビと近い数字が出てくると思っていなかったので、これは驚きました。続きはウェブへ、の先に「店舗に行ってみよう」と行動を起こす流れまで想定して、動線を見直さないといけないと感じました。

新美
認知や興味 という気持ちの変化だけでなく、しっかり行動に移す部分も、リアルとデジタルの両チャネルを通してどう促せるかが重要になってきますね。

今回の調査を通じて、どう考察しますか?

武方
想定していたより、団塊ジュニアの暮らしにおいてオフラインとオンラインが共存している様子が浮き彫りになったと思います。テレビからオンラインの情報へ、オンラインからリアル店舗へ、あるいはオンラインからオンラインへの動線もありました。情報源として、依然テレビは強い影響力を持ちながら、いろいろな手法や組み合わせのパターンが発生しています。

個人的には、あまりデジタルは得意なほうではなく、苦手意識があります。それでも日々使っているので、効果的で利便性の高いさまざまなデジタルメディアが私達の生活を快適にしているといえそうですね。

新美 妙子
博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局

武方 浩紀
博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局

大野 光貴
博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局

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