コラム
DoubleVerifyとの提携で「AaaS with DV」提供開始
~AaaS×DoubleVerify提携戦略発表会レポート~
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広告主企業にとって、運用型広告はとても使い勝手の良い反面、市場の拡大に伴ってブランドセーフティやアドフラウド、ビューアビリティなどのアドベリフィケーションの課題が無視できないものになっています。特にブランドセーフティは、広告キャンペーンの成功やブランドの信頼性維持の観点で対策が不可欠であり、企業の関心も高いテーマです。

今回、博報堂DYメディアパートナーズは、透明性の高い広告取引の実現に寄与してきたDoubleVerifyと業務提携し、新ソリューション「AaaS with DV」の提供を開始しました。AIによって配信ペースやタイミングを最適化し、優良広告面への効率的な配信を可能にします。本稿では、2024年9月25日に行われた「AaaS×DoubleVerify提携戦略発表会」の模様をレポートします。

広告が配信されるサイトは安全か、ブランドイメージに合致するか

戦略発表会には、博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役社長の矢嶋弘毅、取締役常務執行役員およびAaaSビジネス推進センター長の安藤元博、DoubleVerify本社よりCHIEF INNOVATION OFFICER(CIO)のJack Smith氏、そしてDoubleVerify Japan 代表取締役 日本法人代表の武田隆氏が登壇。それぞれの立場から、ブランドセーフティの現状と両社の業務提携を通じたメリット、また新ソリューションの特徴などが紹介されました。

はじめに矢嶋より、今回の提携について「安全でより良い広告効果の提供に向けた大きな一歩を踏み出せた」とし、取り組みの背景が語られました。デジタル広告市場において、特に運用型広告は今、急速に拡大しています。広告主企業にとって欠かせない広告手法でありながら、しかし多くの問題をはらんでいるのも事実です。特に、意図しないウェブサイトや広告面に配信され、ブランドを毀損することを防ぐ「ブランドセーフティ」の観点は、業界全体のテーマになっています。

合わせて矢嶋は、AaaS事業における「with / powered by戦略」についても言及。博報堂DYメディアパートナーズでは現在、広告主企業だけでなくメディアや社会全体における重要な課題に注目し、各領域のプレーヤーとのアライアンスを通したソリューションの共創を強化しています。DoubleVerifyとの提携は、その中でも喫緊の課題であるブランドセーフティ領域のアライアンスになります。

「自社の広告が適切で安全なサイトに掲出されているのか、そのコンテンツがブランドのイメージと合致しているのかといったことに、広告主が非常に関心を持たれ、また不安も抱えておられます。当社はこの状況に対し、広告配信ソリューションの品質と信頼性の強化に取り組んできました。今回の提携によって両社のシナジーを最大限に活用し、広告投資において安全な環境を整え、また生活者にも適切な広告を提供して、デジタル広告市場の健全な発展に寄与したいと考えています」(矢嶋)

AaaS×DV社の技術によって健全な広告エコシステムへ

次にDoubleVerify Japanの武田氏から、グローバル視点でみるブランドセーフティへの意識について、また提携におけるビジネスインパクトが語られました。武田氏によると、世界的にもブランドセーフティは広告主にとって重要課題となっており、メディア投資に関して重視するKPIとして、2021年の時点で第3位に挙がっているとのこと(※出典:https://www.ana.net/miccontent/show/id/rr-2021-media-kpis)。また、運用広告における懸念の中で、ブランドセーフティがもっとも高い懸念事項に挙がっているそうです。

一方、日本では関心自体は高いものの、具体的に対策を取っているかというと、海外市場に比べると後れを取っている状況があります。DoubleVerify の調査「DV Global Insights : 2024 Trends Report」によると、「ブランドセーフティの対策ツールを導入しない場合の広告キャンペーンでは、10億インプレッションあたり29万4,000ドル、約4,200万円のコストが無駄になることが分かりました」と武田氏。

今回の提携により、AaaSが培ってきた実績とDoubleVerifyの知見や技術が合わさることで、業界全体の意識が向上していくことが期待されます。「質の高いサイトと高くないサイトが可視化され、ブランド毀損につながるサイトは排除されます。それにより、広告主企業の方々には安心して広告投資できる環境が整い、健全な広告エコシステムの実現に近づきます。欧米の流れに沿うよう、広告主企業の事業全体への貢献を支援していきます」(武田氏)

AIを使って、ブランドを脅かすAIと戦う時代

続いてDoubleVerifyのスミス氏からは、同社のイノベーションへの取り組みとケイパビリティが解説されました。同社は2008年、市場初のアドベリフィケーション企業として創業。パイオニア企業として研究への投資やソリューション開発を推進し、2023年にはAIのリーディングカンパニーであるScibids社と提携、買収しました。スミス氏は「これからのビジネスは、AIを使って戦っていかなければいけません」と強調します。

AIを使うことのメリットは、例えばマニュアル作業を低減して重要度の高い業務に集中すること、新しいモデルをつくる予測モデリングや、キャンペーンのパフォーマンス分析など数多くあります。一方、今後は「AIを使って、ブランドを脅かすAIと戦う」という側面も強まりそうです。

その点で、スミス氏はさらなるAIイノベーションへの投資領域として、次の3つを挙げます。「まず、プロテクションです。ブランドの評判を守り、メディアキャンペーンの無駄を排除します。次に、メディア予算を最大限に活用してキャンペーンの目的を達成する、パフォーマンス。そして、より効率的なオペレーションで負担を軽減して生産性を高める、プロダクティビティです。これらを、今回のパートナーシップを通じて実現していこうと考えています」と、今後の展望を語りました。

1,000件以上のプロジェクトで活用されるAaaS

最後に博報堂DYメディアパートナーズの安藤より、AaaSのケイパビリティおよび今回の新ソリューション「AaaS with DV」を詳説しました。2020年に立ち上げたAaaSは、メディア視点からの投資最適化を通じて、広告主の事業成長を支援するビジネスモデルです。「Advertising as a Service、このような言葉を使ったのは、メディアビジネスを根本から革新していかなければという志からでした」と安藤。数年経ち、すでに300社以上、延べ1,000件以上のプロジェクトで活用されています。

AaaSのコンセプトは、大きく4つあります。まず広告の価値を「枠から効果へ」と転換し、PDCAサイクルを常に回して広告効果を最大化すること。2つ目は、テレビとデジタルをはじめとするメディア横断の最適化。3つ目は、各種生活者データをセキュアに統合した上での示唆の提供。最後に、常時接続とコンサルティングを通じたビジネスチャンスを逃さない体制です。「AaaSでは生活者データや広告主のファーストパーティデータ、サードパーティデータなどを安全な形で掛け合わせ、AIやアルゴリズムを駆使して最適な広告配信を実現し、広告主企業の事業成果に貢献しています」(安藤)

AIにより優良広告面への配信コストの抑制に成功 「AaaS with DV」の効果

そして今回、提供を開始する「AaaS with DV」について、安藤は「当社の高度なAI技術やアルゴリズムと、DoubleVerifyが提供するデジタルメディア品質の測定技術、AIを駆使したパフォーマンスソリューションを組み合わせて、デジタル広告における優良広告面を対象に効率的な配信を実現するもの」と紹介。具体的には、YouTubeをはじめとする動画広告において、優良広告面に配信しようとすると本来はコストが上がりますが、AIで配信のペーシングやタイミングを調整することでコストを抑制します。

今年7月から実施した検証実験では、2つの大きな成果が確認されました。ひとつはコスト抑制効果で、配信を優良広告面に限ると1.18倍のコストがかかるところ、AIによる最適化によって1.03倍に抑えられました。「これまでコストがネックになっていた広告主企業の方々にも、十分に活用いただけるソリューションだと考えています」と安藤。もうひとつの成果としては動画広告の視聴完了率で、通常配信と比べて26%も上昇しました。これは、ブランドセーフティの強化が視聴者の広告受容度を高めた結果だと考察しています。

「AaaS with DV」は、第一弾としては動画配信サービスでの適用ですが、今後はディスプレイ広告やSNS広告へも拡張を計画中です。安藤は「多様な広告メディアにおいて、品質と効率を両立させた広告配信を実現し、広告主の幅広いニーズに応えることを目指します。さらに、より生活者のブランド体験をリッチにするブランドスータビリティ領域や、今後の新たな指標への対応などに向けても、相互の連携を強化して取り組んでいきます」とし、会見を締めくくりました。会見後の質疑応答では多くのメディアから質問が上がり、関心の高さがうかがえました。
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矢嶋 弘毅
博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役社長
博報堂DYホールディングス 取締役副社長
1961年東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業。84年、博報堂に入社。研究開発部門、マーケティング部門などで、研究調査や広告戦略プランニングに携わる。
96年、博報堂を始めとする複数の広告会社の共同出資によるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の設立と同時に代表取締役社長就任。2009年、アイレップ取締役。16年、D.A.コンソーシアムホールディングス代表取締役社長。
17年、博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長に就任し、次世代型メディア広告運用モデル「AaaS」を構想し、事業化を推進。20年、博報堂DYホールディングス取締役副社長を兼務。
21年、博報堂取締役を兼務。

安藤 元博
博報堂DYメディアパートナーズ 取締役常務執行役員
​博報堂DYホールディングス 取締役常務執行役員/CTO
AaaSビジネス推進センター長
1988年に博報堂に入社し、数々の企業の事業/商品開発、統合コミュニケーション開発、グローバルブランディングに従事。
現在、博報堂DYグループ各社を兼任し、グループのテクノロジー領域を統括している。
ACC(グランプリ)、Asian Marketing Effectiveness(Best Integrated Marketing Campaign)他受賞多数。著
書に『広告ビジネスは、変われるか? テクノロジー・マーケティング・メディアのこれから』(宣伝会議)などがある。

ジャック・スミス
DoubleVerify Inc.
チーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)
DoubleVerifyの営業部門とプロダクト部門間における連携を図る職責に加え、主要顧客とのプロダクトに関するシニアレベルでのリレーション構築と、顧客へのプロダクト導入機会の創出および営業支援を担当。
前職のGroup M社の投資部門のグローバル・チーフ・プロダクト・オフィサーとして、800億ドル以上のメディア投資の、より適切な意思決定を支援するためのプロダクトおよびプラットフォームの開発に従事していました。それ以前は、Genesys社が買収した機械学習企業のSolariat社を共同設立しました。
自然言語によるシグナル検出や消費者のメディア消費予測に関するAIと機械学習に関する特許を7件保有しています。

武田 隆
DoubleVerify Japan株式会社 
代表取締役・日本法人代表
2020年4月より現職
2020年4月にDoubleVerify Japan株式会社日本法人代表に就任。それ以前は2012年より約8年にわたりグーグルジャパン広告営業本部で執行役員として、主に大手広告主にYouTubeをはじめとするビデオ広告、ディスプレイ広告のソリューションを提供するチームを担当し、直近ではデジタルメディアでのクリエイティブの活用について、また様々な業界と共同で取り組むイベントなどのチームを担当。
それ以前は20年以上にわたり広告業界、主に外資系のクリエイティブエージェンシーでグローバルブランドのマーケティングを担当。

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