コラム
スケートボードカルチャーの“かっこよさ”を大切に。唯一無二の技に挑み続ける白井空良選手──アスリートイメージ評価調査インタビュー#4
5歳からスケートボードをはじめ、現在は自らが設計に携わった神奈川県寒川町のパークを拠点に活動する白井空良選手。
スケートボードとの出会いや競技の魅力、プライベートの過ごし方などを聞きました。
(聞き手:博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局 武方浩紀)
競技としてだけでなく、スケートボードのカルチャー=かっこよさを大切にしたい
-Xゲームズ千葉大会、Street League Skateboarding(SLS)シドニー大会、SLS東京大会と3大会連続優勝を果たしていますが、好調の理由をどう分析しますか?
白井:この3連戦は体調がすぐれなかったり、ケガであまり練習ができない状況が続いたりで、いつもの「勝ちたい!」という気持ちより「楽しくすべってケガせず帰ってこよう」という思いで臨んでいたんです。
それでなぜ勝てたのか、自分でもまだ消化しきれていませんが、気負いすぎなかったのがよかったのかもしれません。もちろんそれだけで3連戦を勝ちきることはできないので、やはり練習の成果が出たというのが一番。いい意味で肩の力が抜けたのかもしれないですね。
-白井選手がスケートボードをはじめたきっかけは?
白井:5歳のときにはじめたので、正直あんまり覚えてないんです。父親がスノーボードが好きだったので、その流れで「やってみたら」みたいなはじまりだったと思います。気づいたらスケボーに乗っていましたが、当時は知名度もないし、まわりも「スケボー?なにそれ?」という感じ。スケボーが仕事になるとも思えなかったですし、なにを目標にしていいか分からず、むずかしい時期もありました。
でも、楽しかったから続けてこられたんだと思います。
-スケートボードの魅力は?
白井:唯一無二の動きができるし、まだ誰もやっていない技を生み出すことができる。
スタイルのかっこよさも含めて点数が決まるという点が、ほかの競技にない魅力だと思います。この技を決めたら何点というルールもないですし、その場のシチュエーションや盛りあがりで点数が変わるのがおもしろい。
あと、スケートボードはやっぱりかっこいいです。
いい印象も悪い印象もあると思いますが、それをひっくるめてスケートボードのカルチャー。街なかでスケボーする人たちがいるからこそスケボーの歴史があると思うんです。
自分はあまりアスリートアスリートしたくないという気持ちがあって。もちろん努力をしないと試合では勝てませんが、自分をスポーツ選手だと思ってしまうのはちょっと違う。先輩が言っていたのが、スケートボードは生活の一部で、風呂に入るとか、寝るというのと同じこと。その感覚を大事にしたいんです。オリンピック種目にもなって競技の印象が強くなっていますが、スケートボードそのもののカルチャーも大事にしたいと思っています。
まだ誰もやっていない技を考え、成功させる。その瞬間が一番うれしい
-スケートボードパークの設計にも携わっていますよね?
白井:そうですね、神奈川県の寒川にパークをつくりました。
ストリートスポーツで活性化をはかっている町なのですが、パークができたことで世界チャンピオンが集まって、みんなでスケボーが楽しめる。最高ですよ。町の協力があって実現できたことなので、本当に感謝しています。このパークがなければいまの自分はないと思いますし、すごく好きな場所です。
-スケートボードをやっていて一番楽しい瞬間は?
白井:スケートボードの技はみんながやりはじめると点数が下がってしまうので、いつも誰もやっていない新しい技を考えているんです。
誰もやっていない技って、要は怖い技なんですよね。思いついても怖くてできない。不可能だと思う。でも自分はそれに挑戦しようと思うし、その技ができたときが一番うれしい。大会で技を決めるよりうれしい瞬間かもしれません。これがあれば勝てる、と確信できるので。
-博報堂DYメディアパートナーズでは「アスリートイメージ評価調査」という調査を行っているのですが、白井選手は「常にチャレンジ精神を持ち続けている」が高いですね。やはり、難易度の高い技にチャレンジする姿勢が伝わっているんですね。「精神的強さを感じる」も高いです。
白井:おもしろいですね、調べていただいてうれしいです。セクシーがちょっと足りないですね(笑)。かわいいも伸ばしたいな(笑)。渋いもほぼない…。
低いところをちょっとずつ上げていきたいですね(笑)。
犬と過ごす、友達と遊ぶ、ひとりでサウナに行く。そういう時間が幸せ
-スケートボードの認知度もどんどんあがってきているので、そこにも白井選手の活躍が影響していると思います。ここからはスケートボード以外の話もうかがっていきたいのですが、最近ハマっていることはありますか?
白井:犬がすごく好きなので、犬と過ごす時間は癒されますね。
あとは友達と遊ぶ時間も好きですし、ひとりでサウナに行くのも好き。サウナは頭を真っ白にすることもできるし、逆に集中もできるので、新しい技を考えたりもします。パークにいく時間もすごく幸せで、スケボーしなくてもみんなと話したり、そういう時間が気持ちの安らぎになっていますね。
-スケートボード以外でやってみたいスポーツは?
白井:野球はずっと好きで、パークにも野球道具が一式置いてあります。寒川はBMXフラットランドのパークにもなっているので、自転車に乗って、キャッチボールして、1時間くらいウォーミングアップしてからスケボーするのが楽しい時間なんですよね。
試合前のウォーミングアップにもキャッチボールをしますよ。BMXの中村輪夢も野球がすごく好きで、Xゲームの前はふたりでキャッチボールしてましたね。いま球速100キロ出すことを目標にしてるんです。なかなか出ないですけど(笑)。
-競技のときはファッションにも気をつけている?
白井:ウェアひとつでも本当に印象が変わるんですよね。センスがすごく出る競技なんで、ファッションだけでなく自分のスタイルが出せるようにという意味で大事にしています。
-さいごに、今後の抱負を聞かせてください。
白井:ここまでの3連戦ずっとラフな気持ちで挑んできたので、次回以降も、ケガだけせずに楽しんで帰ってこられたらなと思っています。
自分は誰もやっていない技をやってみんなに驚いてもらいたいし、技を成功させて歓声をもらうその瞬間のためにスケートボードを追求している。スケボーやっている人はみんなそうだと思いますし、これからも自分のスタイルを追求していきたいです。
白井空良
スケートボード(ストリート)
2001年11月3日生まれ。神奈川県相模原市の出身。
5歳の時に親の勧めでスケートボードを始める。
2021年、東京オリンピックに出場、惜しくも予選敗退となるも、
悔しさをバネに努力を続け、2023年世界選手権優勝、2024年パリオリンピック4位と数々の輝かしい成績を収め、世界から注目を集め続けている。
2024年はX GAMES CHIBA、SLSシドニー、SLS東京と3大会連続で優勝と前人未到の記録を打ち立てている。
代名詞の一つとなっているソラグラインドを始め、唯一無二のオリジナルトリックを多数持つ世界を代表するスケーターの1人。
現在の世界ランキングは3位(2025年1月16日現在)
Instagramアカウント
sora_shirai