コラム
concreat
データ×クリエイティブの時代到来に備えて考えてみた
陶國 直孝メディア・コンテンツクリエイティブセンター「concreat」所属
今、時代は猫も杓子もデータです。
弊社でもデータと名の付く部門部署、プロジェクトが目白押し!
あっちのデータとこっちのデータをくっつけて、共分散構造分析とかでドン!
アクチュアルデータとパネルデータの相関がバン!
ビッグデータの波が押し寄せた後、引き波はどうやら「データ×クリエイティブ」。
先日、シンガポールで行われたSpikes Asia 2015を視察させていただきましたが、
そこでもグローバルメガエージェンシーのクリエイティブディレクターや得意先のマーケターたちが、
「データをうまいこと使ったよ!」というクリエイティブ事例を紹介していました。
もちろん「データ×クリエイティブ」といっても、
人の生態データをビジュアライゼーション!とか
脳波の動きを3Dプリンターから出す!
みたいなオシャレ表現の話ではありません。
コミュニケーション設計自体に「もっとデータを使っていきましょう!」というお話。
もっと言うと、
「データ×クリエイティブ」とは
クリエイティブ(企画側)とメディア(データ側)が一緒になって
レビューをしていくべき、というお話です。
そもそもなんでデータとクリエイティブって離れてんの?
私のキャリアからお話すると、初任はi−メディアというWebメディアの担当。
その後、全メディアを横断的に設計するメディアプラナーを経て、
「concreat」というクリエイティブユニットに属しています。
Webメディアの出稿は“レビュー”が必ずセットでついてきます。
「どれだけ表示されたか」「どれだけクリックされたか」
「どれだけコンバージョンしたか」「どれだけ滞在したか」・・・。
さまざまなデータをリアルタイムで把握し、その総括をする。
今よりもっとデータが取れない時代でも行われてきました。
クリック率などが想定より低かったり高かったりしたら、その原因と次への展望を考える。
これってデジタルでは当たり前のことですが、
長らくこのステップは、クリエイティブ(企画側)とレビュワー(データ側)で分かれていました。
また、テレビなど他メディアのレビューでは
「キャンペーントレース」という形でキャンペーン全体での振り返りになってしまいます。
良かった点も、悪かった点も、データ分析・レビューはWebメディア担当の私がする・・・。
本来なら、戦略や表現を考えたクリエイティブ人たちとともに要因分析をして、
より精緻なPDCAを回していきたい、と何度も思いました。
この壁を超えることが「データ×クリエイティブ」の第一歩ではないかと思っています。
クリエイティブこそがデータを先導すべき
現在はさまざまなデータが取れるようになり、冒頭に申し上げた共分散構造分析のような形で、
どの施策がどの数値にどんな影響を与えるかなども分かるようになってきました。
例えば、テレビCMを2,000GRP(※GRP=露出の単位)打って気温が何度上がれば、
週の売上がどう跳ね上がるか予想できるわけです。
そんな時代の中、現在多くの場合において、
施策の立ち上がり前からKPI設計をし、実施中のPDCAによる施策変更、
そして事後のレビューまで、緻密なデータによるシミュレーションとリアルタイムでのPDCAが回っています。
この立ち上がり段階での過去データ分析・KPI設定から
ちゃんとクリエイティブ・企画プランナーが入っていることで、
「なぜ・どの数字を」上げるためにどんな施策を考えるべきかが明確になり、
また途中で数値が悪ければ施策の打ち手を変える、撤退するなどの判断も迅速に行えます。
例えば、私がお手伝いさせていただいた事例でいうと、
「バズ動画施策」を実施した際に、
常に得意先からYouTube Analyticsのデータを共有していただき、
そのデータからどんな国のどんなサイトにリンクが貼られて拡散されているのかを把握し、
露出量が足りていない国への追加PRを実施というのをリアルタイムで判断しながら進めました。
また「ソーシャルメディア施策」では、
開始前から予算の半分しかメディアを発注せず、
施策途中での解析結果からうまくいっていないという判断をし、
追加出稿は無駄打ちになる可能性が出てきたので撤退という選択肢を得意先とともに選びました。
“全員データドリブン” を目指して
すべての戦略と戦術を含めて考えていく統合キャンペーンが主流となってきましたが、
私はそのさらに外側を定義する構造化のステップが必要だと思います。
企画領域もデータ領域も高度化・専門化が進み、
簡単にはお互いの職域を超えられないのもまた事実です。
だからこそ、最初の段階で企画側・データ側が一丸となり、
戦略のさらに上位の概念としてデータを使ったコミュニケーション構造を設計することが重要です。
ここで構造を定義することは、すべての“幅”を決めるということです。
いろんなデータの分析の結果、「商品名のツイート量を10%UPさせる」というKPIになったとします。
するとその時点で戦略は、KPIを前提に「どうやってツイートさせるか」
「どんなベネフィットとともにツイートさせるか」に絞られていきます。
施策はデジタル中心になるでしょう。
テレビや雑誌を使うにしても、ツイートしたくなる仕掛けを入れることでしょう。
そうすることで、計測不可能な部分を削ぎ落とした、よりシャープなアイデアになるはずです。
逆に、すごくいいアイデアの計測方法を考えるということも早めに動くことができます。
「そのアイデアはいいけど、KPIに寄与するか見れないね」なんて言われることが減るのです。
そして、途中での施策検討や、レビューでいい点・悪い点が明確になり、
全員が次のよりよい施策へと進んでいけるはずです。
みんなの理解が大事
企画側のデータ分析、解析、アドテクノロジーなどへの理解、データ側の企画への精緻な分析、
それをコントロールする営業・・・とさまざまな人がお互いの理解を深める必要があります。
そしてもちろんそれはクライアントとの関係も同様です。
精緻なデータ解析をしようと思えば、
信頼関係と守秘義務を持って売上データ、サイト解析データ、会員の行動データなど
さまざまなデータを共有したいただく必要があります。
また、共有された分だけ、広告会社も精緻な分析と施策でお返しなければなりません。
リアルタイムでPDCAを回しながら打ち手を変えていくのであれば、
広告予算も絶対確定という形にできず、
プロモーショナルな施策だったとしても運用型広告のように予算を余らせる覚悟も必要になってきます。
また、大きな広告予算を持つクライアントであればこそ、
クライアント社内もデータを見る人とクリエイティブやメディア出稿の担当者が違ったりすることも多く、
難しいかもしれません。
まずは、一歩一歩お互いの領域理解と、相互越境をしていくことが
「データ×クリエイティブ」の成功の近道かと思います。
なんだかまるで、世界平和と一緒ですね。
愛とデータは地球を救う!