コラム
メディア・コンテンツビジネス
メディアビジネス開発は、何を開発するのか?
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“広告会社の仕事“とは不思議な仕事です。正解が無い、仕事です。いや、正確には「無限の正解」がある仕事です。内容を垣間見ると、マスメディアやWeb等の広告枠販売やクリエイティブの制作を担当するだけでなく、最近ではアドテクノロジーの研究・実証・開発や、膨大な生活者データの分析等にも取り組んでいる。最近は、モバイルや動画広告なんてのも、増えて来たかな~・・・。明日は、その領域がどこまで広がっているのかわからない。その仕事はまさに無限大であり、未知である。なればこそ、自分の描く「ゴール」や、「本質」をまず持っておくことが大切だと思っています。パウロが描く博報堂DYメディアパートナーズの仕事の本質。それは、「生活者のハートに火を点ける事」。

私が所属している「メディアビジネス開発センター」は、その「火の点け方」にこれまでのメディアビジネスとは違う新しい風を持ち込むことをミッションとしています。

■iBeaconを使って、生活者の心に火を点ける■

私がいま取り組んでいるメディアビジネス開発の中で、iBeaconを使った施策があります。iBeaconとは、Bluetoothを使って生活者のスマートフォンに情報を提供することができる、いま注目のデバイス。米Apple社主導で進めるこのスマホと店舗を結ぶトリガーも、「火の点け方」を間違えればその心には響かない。でも、Aさんにとっては響かなくとも、Bさんのハートには火が点くかもしれない。答えが無い世界です。
その中でビジネスとして成り立つ最大公約数とは何なのか。
今、iBeaconを活用する企業の多くは、「割引クーポン」を提供するという、「火の付け方」を見いだしています。それも、答えの一つだと私は思います。
ただ、生活者のハートに火を点ける方法は、クーポンを配るいわゆる「小銭で釣るだけ」ではないはず、です。もっと継続的に、もっとディープにクライアントと生活者のハートをつなぐ方法はないだろうか?

■カリスマ店員を”店と街の情報編集者”に仕立てる。■

2014年11月22日にオープンしたURBAN RESEARCH グランツリー武蔵小杉店において、iBeaconから得られる情報コンテンツとして「割引クーポン」だけではなく、「お店の人気スタッフが取材した、お店周辺の街の情報」に着目したサービス「教えて!びい子」といサービスを開発しました。このサービスのポイントは、「お店の周辺の街に関する情報を提供することで、お店に来る事だけでなく、その前後もお店のある街で楽しんで欲しい」という思いを込めました。お店にいる人気店員をフックに、店・街・客の3者をつなぐことで店と街の間で人が回遊するようになり、人が増える。客にとっても買い物以外の楽しい体験を得ることができる。こうしたwin-win-winの関係を作ることができると考えたのです。そして中心には、iBeaconがあります。この仕組みはどんなお店や街でも使えますが、特に観光施策や名所が複数あるような地方では、更に大活躍できると考えています。

さて、「教えて!びい子」では、今回の店頭にいるスタッフさんを模した全身フィギュアを3Dプリンタで作成し、その中にiBeaconを埋め込んでいます。このフィギュアに近づくことで、iBeaconから情報を得ることができる仕掛けになっているのです。

3Dプリンタも、iBeaconも新しい技術であり注目を集めていますが、その技術を単に使うだけではなく、その先に何を伝えるか?そして、どのような行動をしてもらうか?というゴールを描いておくことが重要。(連想ゲームのようなもの?(笑))

私はこの「教えて!びい子」を通じて生活者の心の奥底にある「行動欲求のメカニズム」をほんの少しでも解明出来たらと思っております。マズローの自己実現理論では有りませんが、広告の世界でも同様に生理的、生物学的見地から人の心を読み解いていきたい。いまようやくセンサーやITの力を用いてその扉の前に立っていると感じています。無意識の意識が無意識のうちに集約され、整理分類され、自分のハートに火を点けるスパーク(火花)として戻ってくる。

そんな世界は「恐ろしい未来」ではなく、「セレンディピティ(偶然の出会い)」に満ちた豊かな世界になると私は信じています。メディアビジネス開発とは、「こころのものがたり」を開発するもの。ということになるでしょうか。

【参考】
iBeaconで”まち・ひと・おみせ”をつなぐ新サービス「教えて!びい子」 提供開始 (2014.11.20)

小林パウロ篤史 メディアビジネス開発センター

1998年総合商社に入社。中南米、アフリカへの自動車輸出業務に携わる。初出張はスーダン。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて広告の最前線を経験。「ミクシィ年賀状」などで受賞歴あり。2011年より博報堂DYメディアパートナーズの子会社(株)MediaJUMPを起業した後、2014年よりメディアビジネス開発センターにて勤務。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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