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生活者の意識に残る「アスリートの活躍」~「アスリートイメージ評価調査」2016年総括特別編より~
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昨年開催されたFIFAクラブワールドカップの決勝戦は鹿島アントラーズが世界のレアル・マドリードをあわやのところまで追い込む驚きの展開で、手に汗握ったサッカーファンの方が多いのではないでしょうか。私のSNSのアカウントでは同時間帯に放送されていた『真田丸』とクラブワールドカップの中継とが「赤備えと角」繋がりによってタイムライン上で混線していて、「真田信繁による決死の突撃により、豊臣軍がレアルを逆転する」というおもしろい現象が起こっていました。一時的とはいえ欧州王者からリードを奪う試合展開も、このようなSNSならではの情報消費も、Jリーグが設立された当時では考えられなかったことです。

さて、博報堂DYメディアパートナーズ・博報堂DYスポーツマーケティング・データスタジアムの3社は、2016年末に「アスリートイメージ評価調査2016年総括特別編」で、2016年に活躍したアスリートのランキングを発表いたしました。
「今年活躍した」アスリートの男性の1位は錦織圭(敬称略、以下同)でした。2016年の四大大会の戦績の最高は全米オープンのベスト4止まりであり、2014年のように決勝進出とまではいきませんでしたが、リオ五輪では日本選手として96年ぶりのメダルに導きました。
2位:羽生結弦、3位:内村航平、4位:大谷翔平と続き、5位にはイチローが入っています。「今年活躍した」のランキングの5位以内にイチローが入るのは2012年以来、4年ぶりのことでした。メジャー通算3000本安打やピート・ローズの持つメジャー通算4256安打を日本・メジャー通算で超えるといういくつかの節目を迎え、長年にわたる活躍が今改めて注目されているのでしょう。
女性では、4大会連続五輪金メダルを獲得し、国民栄誉賞を受賞した伊調馨が1位となりました。以下、2位:吉田沙保里、3位:福原愛、4位:石川佳純、5位:髙梨沙羅となっています。男女合わせると、10人中6人がリオ五輪で何らかの活躍をしているアスリートとなりました。

また、「勢いのあるアスリート」の1位は大谷翔平となりました。ごく自然な結果であるようにも見えますが、ここのランキングは、多くの場合は今までさほど知られていなかったアスリートがブレイクした際に上位に来るようなイメージ項目なのです。もちろん大谷選手の2016年の活躍は八面六臂と称されるべきものでしたが、一方で大谷選手が2016年初めて有名になった選手かというとそうではなく、2012年の入団以来今までも多大な活躍をしてきた選手であることはご存知のとおりです。北海道日本ハムファイターズを日本一に導き、投手・指名打者の双方でベストナインに選出されるなど、プロ入り以来掲げていた「二刀流」を本格的に成し遂げた年であることが人々の印象に残り、さらなる勇躍としてとらえられたのでしょう。

ところで日本漢字能力検定協会が毎年発表している『今年の漢字』、2016年は「金」となりましたが、この漢字はこれまでに唯一3回選出されている漢字であると聞きます。他に「金」が選ばれた年が2000年と2012年であることを踏まえれば、リオ五輪のメダルラッシュがこの漢字の選出理由の大きな要因となっていることは、想像に難くありません。また、過去に選ばれた他の漢字について調べてみますと、2011年の「絆」(なでしこジャパンのW杯優勝)、2003年の「虎」(阪神タイガースのリーグ優勝)などがあり、今年を含めた過去10年において、何らかの形でスポーツが『今年の漢字』の選出理由として関連しているものは実に7字に及ぶのだそうです。

世の中において流通する情報量、ないしは生活者が触れる情報量も肥大し続ける中、共通認識としての「世の中の出来事」はそれぞれの人によって徐々に違うものになっていっている印象を受けています。そんな中でもスポーツは、先に挙げたクラブワールドカップと真田丸の例に限らず、人によって触れ方こそ違えども、なお生活者の大きな関心事であり続けている事実がうかがえます。アスリートやスポーツイベントに対するスポンサーシップが、様々な企業に関心を持たれ続ける理由のひとつも、きっとここにあるのでしょう。
今年のスポーツシーンは、はたしてどのようなものになるのでしょうか。

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■アスリートイメージ評価調査
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市川 修平 メディアビジネス開発センター メディアコンテンツマーケティング部

2007年入社。新聞局にて大手新聞社のメディアバイイングを担当した後、i-メディア局に異動し、伸長著しい運用型広告の業務領域に携わる。
現職ではスポーツ領域のほかにも、幅広くメディアのナレッジ開発に取り組む。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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