コラム
メディア環境研究所
CESから考える、IoTの定義とは? ~CES2015レポート 「インターネット化する生活空間」 (前篇)~
加藤 薫メディア環境研究所 上席研究員
今年の1月、全米家電協会(CEA)主催で米国ネバダ州ラスベガスにて行われた「Consumer Electronics Show(CES)」に取材に行ってきました。CESは家電まわりの「最新技術のお披露目の場」として3600社以上が出展。そこで展示される新製品の数は20000点以上にのぼるという世界最大級のコンベンションで、今年の来場者数は昨年を上回る16万人を突破したと言われています。1月というキリの良いタイミングでもあり、例年その一年の業界トレンドを示唆する重要な場として業界内外の熱い注目を集めています。
過去にCESで発表された新製品としては、ビデオテープレコーダー(1970年)、CDプレイヤー(1981年)、ファミリーコンピュータ(1985年)、ハードディスクレコーダー(1999年)と、そうそうたる製品が挙げられます。2001年以降は、プラズマTV、IPTV、3DTV、スマートテレビ、4Kテレビといった、テレビ受像機を中心とした新製品の発表が続いていました。
そんな流れの中、「IoT」というキーワードが会場中を席巻していたのが2015年のCESです。「今年、家電ショーCESの潮目が変わった」とおっしゃるジャーナリストの方も多々いらっしゃいますが、私も同感です。かつてない未来感満載のコンベンションとなったCES2015を、メディア環境研究所の視点でひも解いていきます。
■ 溢れかえる「スマート○○」という新製品群 ■
IoTとは、Internet of Things の略で、一般的には「モノのインターネット化」と訳されています。CESの会場には、インターネットに接続された、スマートテレビ、スマートカー、スマートハウスの展示がひしめきあっていました。このあたりまではまだ私も想定の範囲内だったのですが、スマート化する新製品群はもっと無数に広がっていました。スマート哺乳瓶、スマートジュエリー、スマート植木鉢、スマートゴミ箱…これは生活者にとっていったい何を意味するのかしら…。スタートアップの企業が集まる展示フロアでは、そうした一見「ジャストアイディア未来製品」のようなものが、さらに多数展示されており、「スマート○○」という大喜利をみているようでした。うーーーん…。取材初日、東京ドーム4.4個分といわれる広さの展示会場の中で、私は途方にくれました。
■ 「IoT=モノのインターネット化」という定義は、我々にとってミスリードの危険性あり ■
さて、この整理できない感じは、私のIoTに関する定義や理解が間違っているんじゃないか、と考えました。「モノのインターネット化」、という言葉、確かに「いろいろなモノがこれからインターネットにつながるのね」と一見分かったような気になるのですが、メディアやマーケティングに携わる人たちからすると、変化の本質が抜け落ちやすい表現だということに気が付きました。では、私たちにとってIoTはどう定義されるべきでしょう?CES2015の取材の後、メディア環境研究所のメンバーで、私たちは「IoT」をどうとらえるべきか、ワークショップを行いました。モノのインターネット化、という視点だけだと狭い、しかし生活者をとりまく環境全体がインターネット化する、とすると漠然としすぎて捉えづらい・・・マーケティング上で管理できる単位も反映したいな・・・など、いろいろな欲張りなニュアンスを盛り込んでいくと、「IoTとは、モノ、メディア、ヒト、場の状態がインターネットでつながること」と定義することがよさそうだ、という結論に至りました。
単純に、個別のモノが単品ごとにインターネットに接続するだけでなく、メディアを含めたそれらが相互連携していくことこそが重要である、と。
≪ CESに見えた 3つのインターネット化 ≫
1、スマートテレビ ~メディアのインターネット化~
2、スマートカー/スマートホーム ~モノ/場のインターネット化~
3、ウェアラブル ~ヒトのインターネット化~
では、上記の定義に基づいて、次回、CESに見えた3つのインターネット化について、そして、IoTの今後についてとりあげたいと思います。
(後篇へ続く)