コラム
メディア環境研究所
~中高年に拡がるモバイルシフト~ メディア環境研究所 メディア定点調査連載コラム②
新美 妙子メディア環境研究所
モバイルシフトに新たな波
2017年、スマートフォン(以下スマホ)の所有率は77.5%(以下、データはすべて東京)と8割に迫った。一昨年(69.2%)から昨年(70.7%)にかけては横ばいだった為、スマホは生活者に行きわたって、伸びは一段落したと捉えた矢先であった[図1]。
図1:スマートフォン所有率
今年、所有率が大きく伸長した要因は、40~60代の所有率の伸びであることが性年代別のグラフから見えてくる。40代は男女ともに初めて8割を超え、50代は7割を超えた。60代は男性が5割となり、女性は4割に迫った。最も低いのは60代女性だが、所有意向は非常的に高く(22.6%)、まだ伸び代がある様子が伺える[図2]。スマホの所有が40~60代の中高年層に広がったことで、これまで若年層が牽引してきたモバイルシフトに新たな波が来たようだ。
図2:性年代別スマートフォン所有率
中高年層のスマホ行動に変化の兆し
中高年層のスマホ所有率が伸長したことによって、意識や行動にどのような変化が出てきたのかを見てみよう。「スマホを寝床に持ち込むことがある」50代女性は、昨年から11ポイント以上伸びて4割を超えた。40代男女では過半数に見られ、いまや若年層に限らない行動になったようである。30代の“寝床スマホ”は8割前後で、10~20代の若年層並み。30代のスマホ所有は、昨年既に若年層と差がなかったが、行動面でも若年層と変わらなくなってきているようだ[図3]。
図3「スマートフォンを寝床に持ち込むことがある」
また、「朝起きて、最初に触れるメディアがスマホ」である50代女性は昨年から13ポイント以上伸びてほぼ3割。40代は4割前後、30代は過半数とこちらもいまどき珍しくない行動になりつつある[図4]。「スマホでニュースを読むことが増えた」人は30代で8割前後、40代で6割以上、50代でも4割前後となり、メディア行動は確実に変化している[図5]。中高年層の“スマホリテラシー”も向上しており、「人と一緒にいるときに、スマホを触っているのは失礼だ」と感じる人が増え、若年層の意識に近づいている[図6]。
図4「朝起きて、最初に触れるのはスマートフォンだ」
図5「スマートフォンでニュースを読むことが増えた」
図6「人と一緒にいるときに、スマートフォンを触っているのは失礼だ」
増える中高年層のソーシャル利用
中高年層がスマホを所有するようになり、ソーシャルメディアの利用にも変化が見られる。40代が大きく伸び、女性は9割近く、男性は7割以上がなんらかのソーシャルメディアを利用するようになり、徐々に若年層との差が縮まりつつある。50代でも6割前後がソーシャルメディアを利用している[図7]。
図7:ソーシャルメディア利用状況サービス別に見てみると、Facebookの利用は60代女性を除く中高年層で大きく伸びているのが目に留まる[図8]。LINEも伸長している。LINEはコミュニケーションツールである為か、中高年層では男性より女性の利用が高い傾向にあったが、今年は男性が追い上げてきており、60代男女で3割前後が利用しているのだから驚きである[図9]。
図8:Facebook利用状況
図9:LINE利用状況「ソーシャルメディアは自分の暮らしに必要だ」と思う人は10~20代の若年層に比べるとまだ多くないが、「スマホは自分の暮らしに必要だ」と思う人は、若年層も中高年層も変わらないであろう[図10]。
図10「SNS(ソーシャルメディア)は自分の暮らしに必要だ」
「メディア定点調査」の調査項目にはないが、中高年層である私自身の実感であり、周囲の同年代の友人・知人に聞いても異口同音であった。モバイルシフトは若年層から中高年層に拡がり、やがて大きな波になるに違いない。モバイル前提でのコミュニケーションはもはや当たり前なのである。
【関連情報】
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