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メディア環境研究所
家にはAIが“いる” ~メディア定点調査連載コラム2021-⑦~
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メディア環境研究所が2006年から実施しているメディア定点調査。「メディア定点2021」は初めてコロナ禍のメディア環境をとらえた。コロナ禍でメディア環境はどう変化しているのか、生活者のメディア意識や行動にはどんな兆しが見えてきているのか、本連載コラムでご報告していく。

スマートスピーカーは、モノではなくヒト?

「家に××がいるんだけどね。」下校途中の小学生とすれ違った時に、そんな会話が耳に入った。××には、スマートスピーカーに搭載されているAIアシスタントの名前が入る。AIアシスタント搭載のスマートスピーカーが“ある”ではなく、“いる”ととらえているのが面白い。小学3年生くらいであろうか。周りの子達も当然のようにその話を聞いている。

2021年のスマートスピーカーの所有率は16.8%。2018年の3.6%から4倍強と急速に伸長しているが、まだ2割に満たない状況である(図1)。
所有率はそれ程高くはないが、認知率は2018年に既に6割となっており(60.7%)、いまや7割を超えている(73.5%)(図1)。スマートスピーカーが家に“いる”ことは、小学生にとって珍しいことではなさそうだ。

図1 スマートスピーカーの認知率と所有率

「ヒト型ロボットへの抵抗はない」は7割強

「人との関わり合いをもてる人工知能が実用化したらよい」と思っている人は2割(21.0%)(図2)。
2018年から2割前後で推移していて、大きな変化は見られない。AI(人工知能)と関わり合いたいと望んでいる人は増加しておらず、この結果を見る限りにおいては、多くの人が実用化に対して積極的ではないように感じる。

一方、「ヒト型ロボットを家の中で利用することに抵抗を感じる」のは26.2%と3割弱(図2)。
自分の家にいても抵抗はないと感じる人が7割強と大半を占めている。ヒト型ロボットを店舗などで見たり利用したりすることが増えた結果、抵抗感がなくなっているのだろう。特に「関わり合いをもちたい」と思ってはいないが、「抵抗はない」というのが、いまの生活者の感覚なのかもしれない。

図2 人との関わり合いをもてる人工知能の実用化とヒト型ロボットへの抵抗感

家の中で、話し相手が増えていく

「抵抗がない」と言えば、人ではない相手と話しをすることに対する抵抗感はどうなっているのであろうか。「家電(テレビや掃除機)やスマートスピーカー(Amazon、Clova WAVE、Google HOME)などと音声でやりとりすることに抵抗はない」は22.8%。まだ2割であるが、2年前の2019年(14.5%)からは8.3ポイント増と伸びている(図3)。

図3 スマートスピーカーとのやりとりすることへの抵抗感

気がつけば、家の中で話ができる“相手”が増えている。家電が壊れて買い替えた、古くなった家の設備を取り替えた等々、AIとやりとりしようと思っているわけではないのに、いつのまにかやりとりできるAIがさまざまな形で家の中に入ってきている。我が家のスマートスピーカーとのやりとりも徐々にスムーズになってきて、会話らしくなっている。私達が半世紀以上も前からアニメの世界で慣れ親しんできたように、状況に合わせて判断し、最適なサービスを提供、時には叱咤激励までしてくれる・・・そんな、人と密接な関わり合いを持つAIが、当たり前のように家の中に“いる”未来は意外と近いのかもしれない。

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新美妙子
メディア環境研究所 上席研究員
1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

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