コラム
メディア環境研究所
テレビ番組の見られ方は? 急増TVerユーザーの変化とは? @メ環研の部屋
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メディア環境研究所では、2024年で3回目となる「テレビ番組視聴意識調査」を行いました。ドラマ、バラエティ、ニュースなど、テレビ局が制作する「テレビ番組」を、視聴者はどのような機器やサービスで見ているのか? テレビの「見られ方」に注目した調査から、最新結果を報告します。

加えて、メディア定点2024で利用率を大きく伸ばした「TVer」に着目。その要因はどこにあるのか、新規ユーザーはこれまでとどう違うのかを探ります。担当は、上席研究員の野田絵美です。

テレビが好きな10~20代の男性が増えている

今回は15~69歳の2326名を対象に、インターネット調査を行いました。まずは各世代に聞いた「テレビ番組の好意度」を見てみましょう。

テレビ番組が「とても好き」と答えた人の割合は、全体で26.4%だったのに対し、10~20代では35.4%と各世代でトップ。

野田 過去の調査では「実は若者ほどテレビ番組が好き」という結果が得られていましたが、その傾向は2024年も続いているようです。

 

さらに、10~20代を性別で分けて、2023年の結果と比較してみます。

男性10~20代のうち、テレビ番組が「とても好き」と答えた人の割合は、30.0%→38.5%へ大幅アップ。2023年までは“女性の方がテレビ好き”という結果だったのですが、2024年は男性10~20代に「テレビっ子」が増えていることがわかりました。

野田 YouTubeが好きな10代に話を聞いたら、バラエティ番組の切り抜き動画を見てて。それって、テレビ番組なんですよね。“神回”のTVer再配信など「正規のルートで過去番組を見る機会」が増加した今、改めてテレビの良さに気付いた人もいるのでは?

 

テレビ番組の視聴方法は?

テレビ番組の視聴方法に変化はあったのでしょうか。テレビのリアルタイム視聴や、TVerなどの見逃し配信、Netflixなどの有料動画配信など複数の項目について聞いてみたところ、最も多かったのは「リアルタイム」でした。

2023年の結果と比べると、「リアルタイム」の割合にほとんど変化はありません。その他は「録画」が微減し、「見逃し配信」「有料動画配信」が微増しています。

続いて、性年代別にテレビ番組を視聴する機器について聞いてみました。最も多かった視聴機器を聞いてみました。

野田 年代別の視聴機器を見てみると、男性10~20代などで「テレビ」の割合が伸びています。コネクテッドTVにより、見逃し配信などをテレビスクリーンで見る人が増えていると思われます。

 

コネクテッドTVで最も多いのは「無料動画」と「有料動画配信」

では、コネクテッドTVでは、どのような配信サービスが視聴されているのでしょうか。

リアルタイム視聴以外で「最も利用しているサービス」を年代別に聞いてみました。多くの世代で「無料動画」や「有料動画配信」がトップとなりました。その一方、男性10~20代では「見逃し配信」が突出しているという結果になりました。

野田 50~60代の3割以上が「無料動画」や「有料動画配信」も視聴していることは注目したいですね。慣れ親しんだリアルタイム視聴だけではなく、テレビスクリーンとしてさまざまな使い方を見いだしている様子が見てとれます。

 

「TVer」はどのように利用されているのか?

ここからは、見逃し配信サービスの代表格である「TVer」の利用状況について見ていきましょう。

男性10~20代TVerユーザーの約3割が「毎日」利用

各年代にTVerを利用しているか聞いてみたところ、全体の過半数が「利用している」と答えており、「知っているが利用していない」を含めると、サービスの認知度は9割を超えています。特に、女性10~40代は、約6割が利用しているという結果になりました。

また、TVerのユーザーに利用頻度について聞いてみたところ、男性10~20代で「ほぼ毎日」と答えた人が約3割にのぼりました。

TVerを利用している人は、どのようなジャンルの番組を見ているのでしょうか。全体の視聴ジャンルのトップ3は「ドラマ」「バラエティ」「アニメ・ヒーロー」。

年代別に視聴ジャンルを見てみると、男性10~20代ではスポーツ、男性30~40代ではアニメ・ヒーローが強いとわかります。女性はドラマの割合が高く、特に女性50~60代ではドラマが約8割にのぼりました。

ここで、高頻度でTVerを利用する男性10~20代に注目します。彼らは、どんなジャンルをきっかけにTVerを使い始め、今はどんなジャンルを見ているのでしょうか。

「利用のきっかけとなった番組ジャンル」は、バラエティが42.6%でトップ。一方、「現視聴ジャンル」はドラマの72.8%をはじめ、ドラマ・バラエティ以外のジャンルも軒並み数字が伸びています。バラエティをきっかけにTVerを使い始め、ドラマや他のジャンルに利用の幅を広げていることが見えてきました。

 

野田 音楽やスポーツ、ドキュメンタリー、ニュースなど、TVerが扱うジャンルはどんどん拡大しています。あれもこれもと見ていると、「ほぼ毎日」という頻度になるのも納得です。

 

TVerを視聴する機器は?

かつてはパソコンやスマートフォンで視聴されることが多かったTVerですが、コネクテッドTVの普及により、テレビスクリーンで視聴されるケースも増えてきました。

今回の調査でも、TVerを視聴する機器に「テレビ」と答えた人の割合は43.3%となり、2023年の36.8%から伸びていることがわかります。

TVerの視聴機器を年代別に見てみると、男性はすべての年代で「テレビ」が2023年より増えており、男性10~20代では過半数が「テレビでTVerを見ている」と答えています。

 

林 同期の20代男性に聞いてみたら、独身時代はテレビを持っていなかったそうなんです。「結婚したタイミングでテレビを買ったら、リモコンにTVerのボタンがついていたので、テレビでTVerを見るようになった」と。

 

野田 なるほど。誰かと一緒に見る「共視聴」のコンテンツとして、テレビでTVerを見るのはちょうどいいのかもしれないですね。

 

TVerを誰と見ているのか?

次にTVerを誰と見ているか聞いたところ、「一人で」が約8割。男性30~40代は、「配偶者・恋人と」「家族みんなと」「子どもと」の数値が他の世代に比べて高くなっています。

 

野田 以前10代にインタビューしたとき、「お父さんがTVerでバラエティを見ているから私も一緒に見ている」という話がありました。リビングで見ているテレビ番組が、リアルタイムではなく、TVerになる場合もあるわけですね。

 

新規TVerユーザーが拡大した「4つの要因」

メディア環境研究所が実施した「メディア定点調査2024」によると、TVerの利用率は全年代で増加しており、特に「10代」「40~50代」で増加していることがわかります。

なぜ、この年代でTVerを利用し始めた人が増えたのか? 今回の調査では、同年代のなかで「直近1年以内に利用し始めた新規層」と「1年以上利用している継続層」の2つを比較。ユーザー拡大につながる「4つの要因」が見えてきました。

要因1:ジャンルの広がりで新たな層の利用拡大

TVerを利用するきっかけとなった番組ジャンルについて、継続層と新規層にそれぞれ聞きました。継続層は「ドラマ」が約半数を占めている一方、新規層は「ドラマ」と「バラエティ」がほぼ同率。40~50代の新規層でも、同様の傾向が見られました。

 

野田 性別で比べたデータでも、男女問わず新規層は「バラエティ」の割合が増加しています。これまで、ドラマが好きな層に一定の評価があったTVerが、バラエティが好きな層にまで広がっていることが読み取れます。

 

要因2:コネクテッドTVの浸透

コネクテッドTVをはじめ、TVerを利用する機器の変化もユーザー拡大の要因と言えそうです。

「TVerを初めて利用したときの機器」について聞くと、新規層ほど「テレビ」と答える人の割合が増えていました。特に40~50代は、「パソコン」が減少し、「スマホ」「テレビ」が伸びていることがわかります。

TVerを利用した動機についても、40~50代新規層は「テレビがインターネットにつながったから」が上位に挙がりました。

 

田代所長 TVerで配信されるコンテンツの幅が広がったのも、きっかけとして大きいでしょうね。「見たいコンテンツがTVerで配信されていると気づいて、テレビスクリーンで見る」といったケースは、この先も増えそうです。

 

要因3:スポーツ中継やローカル番組

新規層の「TVerを利用した動機」を、さらに性別ごとに細かく見ていきましょう。

10代は男女ともに「『見逃した番組』が見たかった」「自分の“推し”が出演している番組が見たかった」が上位に。男性には、「『スポーツ中継』を見たかった」「自分の『ゆかりのある地域のご当地番組』を見たかった」が、それぞれ10%ほど見られます。

40~50代で見ると、男性は「スポーツ中継」が3位に、女性は「ゆかりのあるご当地番組」が4位に入っています。スポーツ中継やローカル番組がTVerの間口を広げているようです。

要因4:TVerのリアルタイム配信対応

TVerは見逃し配信だけでなく、「リアルタイム配信」にも対応しています。見逃し配信をきっかけにTVerを利用し始めた人が多数を占めていますが、新規層では「リアルタイム配信がきっかけ」という回答も2割ほどみられます。

「見たい番組があるが帰宅が間に合わない」「外出先でスポーツ中継を見たい」といったニーズに応えるものとして、リアルタイム配信をきっかけにTVerを利用する人は今後も増えていきそうです。

テレビのバラエティ番組がもつ「安心感」

今回の調査では、引き続き「若者ほどテレビ番組が好き」であること、さらに男性10~20代男性に「テレビ好き」が増えていることが見えてきました。

その背景には、コネクテッドTVの浸透や、TVerのコンテンツ拡充などがあり、「リアルタイムや配信の区別なく、好きなときに好きな番組を見られる」という環境が視聴を後押しする様子がうかがえました。

最後には10~20代に「テレビが好きな理由(自由回答)」を参照しつつ、テレビへのバラエティ番組の「安心感」について議論が及びました。

ウェビナー参加者からは「一時期の『テレビでやりにくいことをYouTubeでやる』という流れが行き過ぎてしまって、逆に『楽しい』『笑顔になる』といった安心感が求められるところに戻ってきたのでは」という意見もありました。

野田 確かに、特に今の若い人たちは、人を傷つけたり、蹴落としたりする言動に対してとても敏感です。だからなおさら、テレビが持つ安心感に、改めて価値を感じているのかもしれません。

 

バラエティをはじめ、テレビ番組が持つ価値に改めて気づいてもらうこと、そのためにTVerなどの配信サービスを活用しやすい環境を整えることが、新たな視聴者層を取り込む鍵になりそうです。

(編集協力=井上マサキ+鬼頭佳代/ノオト)

野田 絵美
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
2003 年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、食品やトイレタリー、自動車など消費財から耐久財まで幅広く、得意先企業のブランディング、商品開発、コミュニケーション戦略立案に携わる。生活密着やインタビューなど様々な調査を通じて、生活者の行動の裏にあるインサイトを探るのが得意。2017 年 4 月より現職。生活者のメディア生活の動向を研究する。

田代 奈美
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 所長
博報堂に入社し、初任配属で放送局担当業務を担当。以降、メディアプラニング、メディアマーケティング、 博報堂海外拠点、スマートテレビ周辺領域のメディアビジネス開発やメディアやテクノロジーを中心としたグローバルトレンドのリサーチに携わる。2017年に次世代メディアビジネスを推進するための「スマートメディアラボ」を立ち上げるなど、一貫してメディアビジネスに従事。ナレッジイノベーション局での、国内外のメディア環境やメディアマーケティングDXに関するナレッジのグループ内提供を経て、2024年4月よりナレッジイノベーション局局長兼メディア環境研究所所長。

林 祐花
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 研究員
2019年博報堂入社。ビジネスプラナーとして、主に官公庁や独立行政法人を中心とした広告制作業務・メディア業務を担当。2022年よりメディアプランナーとして、家電・消費財・製薬・旅行・官公庁など幅広い業種のメディアプランニング業務に従事。2024年4月より現職。

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