コラム
メディアガイド
テレビのこれから — 視聴形態の多様化にどう対応していくか
川上純平テレビタイムビジネス局
テレビ視聴の減少とスマホ動画視聴の拡大
「テレビを見なくなった」、そんなニュースや生活者の声を耳にするようになりました。実際に博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が毎年行っている「メディア定点調査」でも、全体のテレビ接触時間こそ微減傾向に留まっているものの、若年層(10代・20代)のテレビ接触時間の減少は看過できないものになっています。 その反対に急速に接触時間を伸ばしているのが、インターネットであり特にモバイルです。その象徴とも言えるスマートフォンは、2011年には普及率が20%にも満たないものでしたが、2015年には70%近くまで伸び、それに伴いスマホで動画視聴するという行為も年々増加しています。この傾向は今後も続いていくことが予想されます。
増加する動画サービス、放送局はどう動く
そしてこの数年、新たな動画サービスが数多く誕生しました。民放5局のキャッチアップサービスが開始し、そのポータルであるTVer(ティーバー)が2015年の10月26日にローンチ。見逃した番組1週間無料で視聴できるキャッチアップサービスはユーザーからの反応も良好で、開始から3週間で100万ダウンロード(DL)、2016年2月には200万DLを達成しました。さらにテレビ朝日とサイバーエージェントが合弁会社を設立し、2016年4月11日に本開局した「AbemaTV」は、わずか3週間程度でアプリが200万DLされています。 有料サービスの動きもここ数年活発で、日本テレビのHulu買収やNetflixの上陸、Amazonのプライム会員向けの動画サービス開始、さらに2016年にはソフトバンクがスポーツコンテンツに特化した新たな定額制配信サービス「スポナビライブ」が開始しました。 この他にも動画に関連したニュースは非常に多くなっており、今後大きくなっていく市場であることが予想されます。
広告効果の可視化への要請高まる
テレビ視聴は減少傾向にあるといっても、テレビ広告のリーチ力は他のメディアを圧倒しており、まだまだ広告コミュニケーション上において重要な役割を果たしています。しかし若年層においては接触減少が課題となっており対策を行っていかなければなりません。 博報堂DYメディアパートナーズ独自の取り組みとしては、テレビスポットとネットメディアを掛け合わせ、リーチ最大化のためのプランニングを行うためのツールとして「TVCross Simulator」(テレビ クロス シミュレーター)を開発するなどして対応を進めています。 一方でテレビ広告がサイト誘引や購買など広告主のKPIに対してどの程度貢献しているかを測定し、証明していく部分はまだまだ未整備な状況となっています。広告認知だけではなく、広告投資に対するアクションベースでの効果説明が広告主側でも必要になっていきており、広告会社としてはその対応を進めていかなければなりません。
“コンテンツ”こそがテレビの魅力
ここまでテレビを中心としたメディア環境の変化とテレビ広告について触れましたが、テレビの魅力は何と言っても”コンテンツ”です。生活者が集うデバイスやプラットフォームは変化していくことになると思いますが、その中心にあるのはコンテンツを楽しむという基本的な活動は変わりません。生活者から求められ、かつ広告主が広告を出したいと思うコンテンツを創り、最適なデバイスやプラットフォームで展開していくということが一番大事であり、それは現在のテレビビジネスの延長線上にあるものだと思います。