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オウンドデータの価値をいっそう高めるデータ・活用方法とは?
REPORT

USシリコンバレーで2010年より毎年行われている世界最大規模のデータテクノロジーサミット「RampUp!」。このアジア初のサミットが2015年9月17日、東京で開催されました。米国・アジアのデータビジネスの先駆者達が、デジタルマーケティングのの現在の課題や将来についてフォーラム形式で対話しました。今回はこの中から、パネルディスカッション「オウンドデータの価値をいっそう高めるデータ・活用方法とは?」をご紹介させて頂きます。

オウンドデータの価値をいっそう高めるデータ・活用方法とは?

本セッションでは、現在企業で行われている1stパーティーデータを用いたさまざまな施策について概観しつつ、従来のウェブログとは異なるデータを加えることによって、今後企業のマーケティングがどう変わっていくのかについて議論しました。

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モデレーターは、データドリブンメディアマーケティングセンター・データマネジメントプラットフォーム部長柴田貞規。株式会社ALBERT代表取締役社長の上村 崇さん、アクシオムジャパンのケン リューさん、データドリブンメディアマーケティングセンターデータマネジメントプラットフォーム部篠田裕之がパネリストに名を連ねました。(以下敬称略)

■オンラインとオフラインをどうつなぐか。データ活用のいま

柴田:私自身ここ3年ほどDMPに携わっておりログや購買記録などオウンドメディアのデータを分析してきましたが、ある程度の分析結果は出せても、驚きを与えられるほどのものではなく、正直行き詰まりを感じていました。ログ以外ではどういうデータが有効なのか、あるいはどんな新しい切り口でログを切っていくとよりビッグインパクトを与えられる施策ができるのか。そんな課題を意識しながら、いま現場で何が起きているのかについて話をしていければと思います。

上村:私どもはいま音声認識技術に注目しています。テレビやラジオ、デジタルサイネージや防災放送などと音の連動をしていくことで、ユーザーさんがいままさにどのコンテンツにアクセスしているかを特定できるというものです。たとえばホラー映画の上映中、手元のスマホが映画の内容をリアルタイムで認識し恐怖体験ができるというものや、スポーツイベントの最中に、スタジアムのビッグスクリーンの映像に合わせ全員が一斉にスマホを連動させて応援を楽しむというものがすでにあります。ビーコンやセンサーなどの設置は一切必要なく、たとえば渋谷のスクランブル交差点のスクリーンに流れているCMの音をキャッチするなど、その場の音源をそのまま使うことができ、いままさにそこにいるということを決定づけることができます。

篠田:私がいま取り組んでいる案件に、神戸市の観光サイト「FeelKOBE」の分析があります。DMPを用いることで、神戸を観光する人がどのような検索ワードでFeelKOBEに入ってきて、どのコンテンツを見て、FeelKOBEサイト外で普段何に興味を持っているかなどを把握することができます。それらの情報を用いて、サイト来訪者を6つのクラスターに分け、それぞれのクラスターにあったメッセージをウェブ上の静止画・動画広告で発信しました。DMPのログ解析以外に行ったことは、主に2つの取組みがあります。1つは、神戸ファンによるオンラインコミュニティの解析、もう1つはGPSの移動履歴の活用です。オンラインコミュニティの解析では、神戸市主催の神戸ファン交流のためのオンラインコミュニティに寄せられたコメントから特徴的なメッセージを抽出しました。それらを広告コピーとして活用するとともに、オンラインコミュニティに集う神戸ファンに似た人に、その広告を発信しました。また、GPSの移動履歴の解析では、FeelKOBEサイト内の「GPSによる現在地周辺のおすすめスポットを紹介するページ」を通して集めた、神戸観光者の現在地と時間、どこのスポットを調べたかという情報を用いています。これを先ほどのクラスターごとにまとめ、その人に合った観光情報をリアルタイムで推薦するという取り組みを進めています。これらは新たなデータにより、通常のウェブログだけでは見えなかった観光者のインサイトにアプローチしようという試みです。

■データを統合し、シングルカスタマービューを導き出す

リュー:ウェブログなどのビッグデータをいかに使うかを考える前に、私からは少し違うアングルから話をさせてください。というのも、我々の手元にはすでに多くのデータがあり、いま問題なのは、データを持ちすぎているということかもしれないと考えるからです。私どもが関わったアメリカの大手メディアの事例ですが、オンライン、オフライン、そしてさまざまなチャンネルを通して集まる情報を一箇所に統合するプラットフォームを設けることで、重複情報を整理し、不要なコミュニケーションコストを削減させています。そのようにしてオンラインデータとオフラインデータを効率的にリンクさせ、そこから導き出したシングルカスタマービューをいかに活用するかというのがいま取り組むべき課題だと考えます。
どういった情報がどの企業にとって重要かどうかは、それぞれのケースがあるでしょうが、我々は顧客のライフサイクルを通し顧客のことを知り、より明確な情報を手に入れなければなりません。1stパーティーデータをどう使うか。そしてそれを使うことのベネフィットについて、また企業の広告コミュニケーション活動をどう変えていきたいかなどについて考えなくてはならないと思います。

■オウンドデータの価値を高めるために

柴田:実は我々博報堂DYグループ自体はビッグデータをあまり持っていませんが、60万人のパネルを抱えていて、そのデータを非常に大切にしています。スモールとはいかないまでも、ミドルデータをビッグデータ化して施策に使っている。改めてデータ活用の課題は何でしょうか。また、その価値を高めていくためには何が必要でしょうか。

篠田:案件ごとに仮定されるシングルカスタマービューのなかで、今、手持ちのデータで抜け落ちているものは何なのか、それは、データの切り口を変えることで埋められるのか、ということを意識しています。また、いままで取れなかったデータを使うことで、これまでよりも深く直接的な、より最終ゴールに近い施策の評価の仕方が出来るかもしれない、中間KPIが変わってくるかもしれない。そういったデータ活用を意識しています。

上村:クライアントさんのニーズを聞いていると、やはりあらゆる接触点を横串にさして、1本のストーリーをもってユーザーとコミュニケーションをしていきたいという想いがある。それをテクノロジーや分析という視点から支援する必要が高まっていると思います。

リュー:1stパーティーデータは非常に重要です。ただそのデータを使うことはとても微妙でセンシティブな領域にタッチする。だから使うには賢く使うこと。そして個人情報に十分配慮することが必要だと思いますね。

柴田:ありがとうございました。

 

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