女子のトレンドとインサイトを一気読み!「キャリジョ研」レポート
なぜ女性にこれが流行るのか?どうしたら女心がつかめるのか?分かりそうで分かりにくい女性のインサイトを分析して、男性にも年配者にも分かるように翻訳いたします。このコラムのネタは、得意先との雑談、打ち合わせでのブレスト、深夜の飲み会の小話に是非お使いください。女性をターゲットにした広告マーケティングやメディアプロデュースに役立てれば、これ幸い!
第1回 この現象、言うなれば「フォトジェニック消費」
パンケーキはなぜ・・・
パンケーキ、メイソンジャー、カラーラン、セルカ棒、インスタ。
このような女性たちの流行をあなたはいくつご存知だろうか。
昭和ことばで言い換えるならば、
ホットケーキ、ビンの容器、マラソン大会、スマートフォンで撮影するときの固定スタンド。
最後のインスタとは、写真を投稿して共有するアプリinstagramの略称である。
なぜこんなものが流行っているのか、なぜ女子たちが熱狂するのか。
この消費行動について、まず「パンケーキ」をもとに女性たちのインサイトを紐解いていきたい。
パンケーキ屋に行列をなす女子たち。ニュースや街中でよく見たことがあるだろう。彼女たちは本当にパンケーキを好きなのか?
もし彼女たちにインタビューすれば、オレンジ色のチークを目の下に塗りたくった笑顔でウンウンとうなずくだろうが、決して信じてはいけない。外がサクサクで中がフンワリ、そんなことは食べなきゃ分からん。むしろ味がまずくてもOK。まだ食べたこともない小麦粉の焼き物に5時間も待てるのは、パンケーキを食べたいからじゃなく、パンケーキを写真に撮りたくて並んでいるのだ。
もっと言うと、見栄えのするパンケーキを撮影しSNSに投稿するために並ぶのだ。もっともっと言うと、話題のスポットにいち早く行って、ステキな体験をしているイケてるワタシに、「いいね!」を沢山つけてもらいたくて5時間も待つのだ。あふれんばかりのフルーツが乗った華やかなパンケーキや、クリームがタワーのように積まれた、カロリーのかたまりのパンケーキの投稿に、「かわいい!どこの店?」「これ全部食べたの!?すごいね!」というツッコミコメントがもらえそうな写真を撮りたい。
見た目で勝負できるパンケーキ屋はここ数年行列が絶えないし、いくら美味しくてもビジュアル的に華がないと流行らないのがいまのパンケーキ業界だろう。
「フォトジェニック消費」とは?
映りが良い写真を撮りたい、つまりフォトジェニックな写真を撮りたい。そのために、モノを買ったり、体験を買ったりする消費行動。これが「フォトジェニック消費」である。
この消費行動は、モノそのものを買いたいのではなく、モノの先にある体験を買いたいという「体験消費」とも言えるし、体験したことを情報にして、その情報こそ価値があるのだとする「情報消費」という言い方もできるかもしれない。
購買行動が視覚重視になってきているのだ。モノの機能的価値よりも、むしろモノがどう見えるか、そのモノをどう撮影できるか。そして、モノと自分、モノと仲間、モノと生活をどう見せられるか・・・それが価値なのだ。
冒頭の「メイソンジャー」は、透明のビンにカラフルな野菜を入れた、写真映えのするフォトジェニックなサラダが作れる容器。
「カラーラン」はランニングイベントだが、参加者は白い服を着て準備し、そこに、蛍光色のカラフルなパウダーが撒かれ、参加者が全身カラフルになって走るイベント。
そのカラフルな若者たちが走ったり踊ったりする様子をお互いに撮影して、タグ付けして、コメントを書いて、さぁFacebookに投稿だ。
「エレクトリックラン」や「バブルラン」といった同様のランニングイベントは多数ある。エレクトリックランは夜のランニングイベントだが、暗い中にカラフルなライトが入り乱れてキレイ。バブルランも泡まみれになる面白さや見た目のインパクトがある。集合写真に撮ると、まぁフォトジェニックなこと!パンケーキ同様に「走る」ことそのものに思い入れはないのだ。
そして話題のスポットや旅先に行けば「セルカ棒※」(「自撮り棒」とも言われる器具)にスマホを固定し、棒を伸ばして自分たちを撮影(自撮り)する女子がいる。海外のほうが流行っているアイテムだが、他人に頼まずとも、自分たちで集合写真を撮影できることが女子たちに重宝がられる理由である。みんなでジャンプしたり、みんなで変顔をしてみたり。何度も何度も撮り直して、とっておきの数枚を選んだら、その写真を美しく加工して、さぁinstagramに投稿だ。
※セルカ棒は使用方法によっては危険な場合もあるので 安全面に気をつけて正しく使用しましょう
「フォトジェニック消費」をくすぐるコツ
「フォトジェニック消費」をする女子たちの好物は、
①イイ写真がとれるという「フォトジェニック性」
②いいね!とコメントがもらえる「ネタ性」
③イケてる仲間がいて楽しんでいるという「リア充」感が伝わること
この3つがそろうと、最強のフォトジェニック消費が生まれる。
リア充とは「ネットの生活ではなく、“リア”ルな現実の生活が、“充”実している」ということ。
イケてる仲間がいて、会社終わりにも休日にもイベントごとがあり、ライフスタイルが充実している・・・という女性でありたいのだ。
この「フォトジェニック消費」という行動特性を踏まえると、20代30代女性をターゲットにする広告やイベントはどうあるべきだろうか。
たとえば、イベントをやるなら、まずは会場となる「場」の作り方にこそ企画性が問われる。
タレントがいるだけではだめなのだ。
撮影したくなる背景や、撮影のネタを仕込まなければいけない。
思わず撮影したくなる美しい非日常のきれいな空間を作ってみたり、思わずみんなに突っ込まれそうなおかしなモノを配置してみたり、とにかく撮りたくなるための演出を作り込むべし。また、撮影し拡散したくなるようなカワイイお土産をサンプリングしてもいいかもしれない。もっとサービスしてあげるなら、女子たちのはしゃぎっぷりを撮ってくれるカメラマン役をつけてもいいだろう。
仕上げに、instagramでフォロワーが多い情報発信者である「インスタグラマー」の仲間たちをイベントに招待すれば、瞬く間に「いいね!」が集まる情報拡散型のイベントの出来上がり。
簡単そうで難しいのだが、あなたがもし女性たちをターゲットに企画を考えるなら、この「フォトジェニック消費」をヒントにすることで、ブランドイメージや消費行動を変えられるかもしれない。
illustration : Yurika Yoshida
キャリジョ研って?
「働く女性(キャリア女性)」をテーマに、博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケッター、女性メディアプロデューサーが有志で集まった社内プロジェクト。女性のトレンドを集めてのインサイト分析や、有識者ヒアリング、座談会ならぬ女子会での定性調査、インターネットによる定量調査、クラスター調査などから「働く女性」を徹底的に分析。その成果を社内外のナレッジとして共有し、日々のマーケティング業務やメディアプラニング業務に生かしている。
プロフィール
瀧川千智(たきがわちさと)
雑誌局 業務推進部
兼メディア環境研究所研究員
2005年博報堂入社。マーケティング職を8年経験したのち、博報堂DYメディアパートナーズの雑誌局へ異動。現在は博報堂DYメディアパートナーズの「メディア環境研究所」も複属。女性プロジェクト「キャリジョ研」のメンバー。好きな科目は日本史、好きな食べ物は漬け物、好きなニュースは芸能情報。