スパイクス2017のミュージック部門の審査委員長を務めたTBWA\HAKUHODOの佐藤カズー、アウトドア & ラジオ部門の審査員を務めた博報堂の三浦竜郎、メディア部門の審査員を務めた博報堂DYメディアパートナーズの嶋田三四郎に、各部門の審査基準や今年の受賞作品の特徴などについてインタビューしました。第1弾は、佐藤カズーです。
■ミュージック部門
佐藤カズー
TBWA\HAKUHODO
チーフクリエイティブオフィサー
―今年のミュージック部門の審査基準についてお聞かせください。
ミュージック部門は昨年新設された新しい部門です。その審査委員長を務めるに当たり大事にしたかったのは、カンヌで有名ミュージシャンのMVが高く評価されていたのに少し疑問を感じていたこともあって、やはり音楽を使うことによって「いかにブランドがストーリーテリングできているか?」という基本的な点を見ること。また、ほかのアジアの国々にとってガイドラインとなりうるような、フレッシュな音楽の使い方を発見し、ハイライトすることでした。ビッグブランドを優先させるとか、チャリティはだめだとか、そういった偏りも排して、自分らしい基準を貫けたと思います。4人の審査員は、ミュージシャンのほか、ビール飲料メーカー、レコード会社、音楽プロダクションから来た方々で、4者4様の視点で審査に当たりました。
―ミュージック部門のグランプリ作品と個人的に印象的だった作品は?
56作品のなかで、いい作品だと思ったのは、ゴールドを獲ったGoogle Play Musicの「THROUGH THE DARK」とグランプリを獲ったニュージーランド航空の「SUMMER WONDERLAND」です。特に後者は、個人的にもグランプリにならないとおかしいと思っていたので、なかば強引に(笑)推しました。クリスマス・ソングの定番である「ウィンター・ワンダーランド」は、雪だるまやソリが出てくる、冬の情景を歌った歌ですが、そのリリックをサマーバージョンに替えるというもの。歌うのは歌手のローナン・キーティングです。歌詞には太陽の日差しやビーチサンダル、バーベキュー、汗だくの兄貴など(笑)が登場し、南半球のニュージーランドだからこそ可能な、夏に過ごすクリスマスの情景を歌うという観光プロモーションです。カンヌですでに注目されたものではない新しい作品をハイライトしたいと思っていましたし、まさに作品の中心に音楽が据えられた最高のアイデアだと感じたので、無事グランプリに選ぶことができて非常にハッピーです。
ニュージーランド航空「SUMMER WONDERLAND」(HOST・オーストラリア)
URL: https://www.spikes.asia/winners/2017/music/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。
―日本がスパイクスで受賞するための秘訣とは?
今年のエントリー数は約4300で、そのうち約1000作品が日本のものです。このエントリー数は他国を抑えてトップではありますが、実際は紐づけるサブカテゴリーを間違えてしまったばかりに審査云々の前に落とされたというものもとても多い。サブカテゴリーの多さやその定義の分かりにくさ、言語のハンデなどもあって、日本人が海外の広告賞にエントリーする際にはありがちな問題だとは思いますが……。基本的には、「いい仕事は受賞する」と考えていますが、サブカテゴリーさえ間違わなければ受賞の可能性があった仕事もたくさんあったはず。コスト的にも非常に勿体ないことだと感じています。実際、とある外資系広告会社にはエントリーするサブカテゴリーがきちんと合致しているかをチェックする専任職を置いているとも聞きます。今後はそうした「サブカテゴリー対策」にもしっかり取り組む必要があるのではないでしょうか。
―スパイクスなど広告賞の意義とは?
広告賞には二つの意義があって、一つはアイデアの最高潮を見せつけることで、日々の仕事全体の質やクリエイティビティの質の底上げを図ることができるということ。スポーツの世界にオリンピックがあるように、広告に携わる人間が共通して目指す何かはやはり必要だと思います。それから、若い世代にとっての学びの場であるということです。優れたミュージシャンであればあるほど死ぬほど音楽を聴いていると言いますが、広告も同じです。世界中から集まる作品を一カ所でまとめて見ることができるのは広告賞ならではですから、若い世代にはぜひ積極的に広告賞を体験し、たくさんの仕事に触れ、感じたことを自分の仕事に還元させてほしいと思います。
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