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デジタル音声広告【でじたるおんせいこうこく】
近年成長著しいラジオアプリ「radiko(ラジコ)」や音楽聴き放題サービス「Spotify」などの、ユーザーデータによるターゲティングが可能なデジタル音声サービスにおける音声広告を指し、地上波ラジオ放送の音声広告とは異なり、「デジタル音声広告」と定義される。
マーケティングの観点から、なぜ今「デジタル音声広告」に注目すべきなのか。簡潔に言えばデジタル音声サービスの利用者が拡大しており「デジタル音声広告」は他の広告にはない利点があるから、ということになる。
「デジタル音声広告」成長の背景
デジタルの環境や技術が進展したことによるデジタル音声サービスが誕生し、そこでの収益施策として「デジタル音声広告」が生まれた。
縮小するラジオ広告市場において、聴取環境整備のためradikoが立ち上げられ、クリアな音質、エリアフリー/タイムフリー等の革新的なサービスにより、現在は月間の利用者数が約900万人を超えるサービスに成長している。
音楽聴き放題サービスも利用者が拡大中だ。中でもSpotifyは約5,000万曲ものラインアップをそろえ、レコメンド機能なども充実させることで、生活者の音楽体験を最大化し人気を博している。ここ数年ユーザー数を大きく伸ばしており、現在は全世界で約2億人以上が利用するサービスとなっている。
オンデマンド音声サービス(ポッドキャスト)にも注目だ。放送局だけではなく、一般ユーザーも音声コンテンツを制作し、ポッドキャストに配信を行うようになった。GoogleやApple、Spotifyなどがポッドキャストサービスの代表例である。アメリカではポッドキャストの利用者が日々拡大しており、日本市場での需要のさらなる伸びも想像に難くない状況となっている。
「デジタル音声広告」の展開
radikoのデジタル音声広告「ラジコオーディオアド」は、属性(性別や年代)はもちろん、興味・関心やメディア接触、商品利用意向や、位置情報などでもターゲティングが可能であり、日本における「デジタル音声広告」の主要メニューとなっている。同じく、Spotifyも「オーディオアド」を展開しており、日本でのSpotify利用者に対して、radikoのようなターゲティングが可能なことに加えて、生活者の音楽聴取傾向に合わせた独自のターゲティングも可能である。
(株)radiko 媒体資料より引用
また、ポッドキャストにおいても、広告メニューが誕生している。オトナル社が提供する「ポッドキャストオーディオアド」だ。各種ポッドキャストに配信されているポッドキャストコンテンツを対象に、ターゲティングしてデジタル音声広告を配信する商品である。
「デジタル音声広告」の利点
従来より「音声広告」(ひいては音声メディア)の強みとして「深く刺さる」という特徴がしばしば指摘されてきた。音声ならではの「距離の近さ/声の温かさ」「広告もコンテンツの一部」「習慣的接触メディア」といった要素である。
データによるターゲティングや各種の手法により、地上波ラジオよりも更に「適したユーザーに」「的確に」広告を届けることが可能になった。ビデオリサーチ社の調査によると、動画広告やディスプレー広告よりも音声広告のポイントが高かった特性として「印象に残る」「覚えやすい」「親しみがわく」などがある。音声広告の「深く刺さる」という特徴を裏付けているといえよう。
ビデオリサーチ社 ACR/ex2020年4-6月調査(全国主要7都市)より作成
「デジタル音声広告」の今後
手法としても商品としてもまだ新しい「デジタル音声広告」の存在や特性、効果などについて、広告主への認知度を高め、より広く活用してもらうためにはどうすればよいか。
まず様々な広告主のコミュニケーション活動において、この「デジタル音声広告」の効果を実証・可視化していくことが必要だろう。また、他メディア(特に近年コミュニケーション活動の手法の中心となっているオンラインメディア)と「デジタル音声広告」の組み合わせによる、コミュニケーション効果の最大化を図ることも重要だ。例えば、ディスプレー広告やビデオ広告をヒットさせた生活者に「デジタル音声広告」を重ねてヒットさせ、より高い効果を得るリターゲティング等が分かりやすい手法である。デジタルであることを生かし、効果の可視化・最大化に挑戦していくことが必要だ。
そうした取り組みをベースに、実際に広告主に「デジタル音声広告」を活用してもらうことで多くの成功体験を創り、その活動を積み重ねて「デジタル音声広告」のプレゼンスアップを図っていくことが、今後ますます重要となってくるだろう。
※本稿記載の情報は、執筆時である2020年10月初旬頃に収集可能な情報に基づき記載。
※「ウェブ広告朝日」より転載
(20-4151/朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)