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アクチュアルデータ【あくちゅあるでーた】
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■ アクチュアルデータとは何か? ■

アクチュアルデータとは具体的に何を指すものなのだろうか。おそらく業界的にもきちんと定義されておらず、企業や担当者によって定義はまちまちだと思う。ここで定義するとすれば、数千から数万の特定のユーザをグループ化して許諾をとりアンケート等を通じて取得するパネルデータと、例えばサイトアクセスした人全員のアクセスログといた全数データ等がアクチュアルデータといえる。予めお伝えしておくと、本文中で取り上げるデータは、すべてユーザの許諾を得て取得したものである。
本稿では、アクチュアルデータとは具体的には何をさすのか、それらデータの取り扱いに必要な環境、データの利活用方法、企業のメリット・デメリットという視点で解説する。

私どもはアクチュアルデータとして次のデータについて分析し、企業のマーケティング活動に活用している。
①サイトの閲覧情報
②サービスの申し込み履歴や物品の購入情報
③ハガキや封書で送付されたキャンペーン応募やアンケートの情報
④ID-POSデータに代表される実際の購買データ
⑤ソーシャルデータ(つぶやきやSNSへの投稿等)

一般的な企業の視点からもう少し具体的に解説すると、①は企業のウェブサイトやタイアップ先サイト等を訪問したユーザが、いつ・どういうページを・どのくらいの時間閲覧したかという情報である。さらに、リファラーを見ることによってそのユーザがどこのサイトから来たのか、どのキーワードを検索して来たのかもわかる。ただ、このリファラー情報は全ての訪問情報を取得できるわけではないので注意が必要だ。サイトの閲覧情報では、ユーザの名前やメールアドレス、住所といったものは取得できない。②は、ウェブサイトから自社商品への資料請求や問い合わせ等のデータのことである。ユーザの名前・メール等の個人に紐付いた深い情報が入手できることになる。③は、ネット上でのデータというよりは、例えばハガキでのキャンペーン応募者のデータ等である。④はオンラインショップでの商品の購入データではなく、スーパーマーケットやドラッグストアの店頭での商品購入データを指す。そして、⑤はご存知のとおりSNS等に書かれたユーザ自身の声のデータのことである。ユーザーが発信した企業の商品やサービス等に対してのポジティブ・ネガティブのどちらも含むテキストデータを指す。

■ アクチュアルデータの運用には、外部リソースの活用も検討すべき ■

次に、これらのデータを活用するための環境について述べたい。上記5つのデータの中で一番やっかいなデータは何かお分かりになるだろうか?実は、「①サイトの閲覧情報」なのだ。普段企業の担当者はサイトの閲覧情報を、Google Analyticsやアドビアナリティクス等のツールを使ってご覧になっていると思う。サイト閲覧データをそれ単体で見て、分析し活用するには1つのツールを使えば十分である。しかし、実際のユーザ行動はネットに閉じていないのが事実で、本当のユーザ行動を把握するにはネット以外の行動も見ていく必要がある。そのために、ツール上で加工される前の元データを入手し、企業自身で加工した上で他の複数のデータと照合し、分析しなければならない。そのデータの容量が膨大なのだ。どのくらい膨大かというとテキストデータのみで1ギガバイトを軽く超えてくる。A4ワードファイルに換算すると数万ページ以上・・・。こうなると通常の企業の担当者のPCだとデータ処理はほぼ不可能だ。また、元データというのはそれだけだと非常に扱いにくく、ゴミデータも大量にあるし、データとデータが繋がっていない状態だったりする。これらのデータ処理を事前にやる必要がある。なので、非常に扱い難易度は高いといったのだ。

弊社ではTreasureData社と契約しセキュアな状態で大量データを保有、処理する場所を確保している。また、データサイエンティストのために開発用PCの設置等を行い、分析環境を整えている。企業の情報システム部門であればこの環境を作ることはたやすいが、マーケティング・販売促進・営業部門だとかなり難易度が高いだろう。さらに言えば、②・③については個人名やメールアドレス等が含まれるため、取り扱いが自由にできるデータではない。法律に従い十分に整備された環境で取り扱う必要があるものである。データ処理について、企業としては自社での実施にこだわらずに外部リソースをうまく活用することを検討していくべきだと思う。

⑤については、取り扱いが②・③とは別の意味で難しい。個人情報うんぬんもさることながら、日本語という複雑怪奇な言葉を、どうやって機械的に処理していくかという技術的なハードルが非常に高い。国内外のテクノロジー企業がこの解析に挑戦し進化していきているので、いずれはクリアされるだろうが、今は企業担当者や外部の事業者が一つひとつの投稿を見て、整理・まとめを行い、それを見ながら情報を分析するというプロセスがいまだ残っている。(むしろ多いかもしれない)

■ データ活用の新提案「Querida(クエリダ)」とは? ■

では、ここまで手間をかけてまで「アクチュアルデータ」が重要なのだろうか?念のため申し上げておくと、弊社はアクチュアルデータ”のみ”を大切にしているのではなく、アクチュアルデータ”も”重要であると考えている。
広告会社は、従来パネルデータと呼ばれる一定のユーザへの調査・アンケートをベースにデータ分析をしてきた経緯がある。パネルデータからは、ブランドの思いたちタイミングやブランドへの好感度等の定性的な情報を入手できてそれはそれで非常に価値の高いものである。ただ一方、調査・アンケート実施のタイミングによっては、データの鮮度は落ちるのは避けられない。また、ソーシャルメディアに代表される「今の、新鮮な生声」を聞くことはパネルデータでは難しい。大量のログから見つかるちょっとした発見も、同様に難しい。マーケティング施策へ活用するにはアクチュアルデータとパネルデータの両方のデータを使う必要があると考えている。

では、企業としてこれらのデータをどうやって利活用していくのがいいのだろうか。
ここ1,2年企業内でのデータ活用があちらこちらで騒がれており、「データを活用しない企業はだめだ」という強い論調で語られることが多い。しかし、アクチュアルデータへの取り組みのハードルはかなり高く、やむを得ないと言わざるをえない。マーケティング部門がGoogle Analyticsをみてオペレーションするとか、CRM部門がリテンションアップのための新しいメール配信施策をするということであれば、データの利活用は比較的簡単だ(どちらも工数はかかるが)。だが、ここで言うアクチュアルデータへの取り組みは、それらの部門横断で行うものである。この段階で、もう無理だと諦めてしまう企業担当者も多いことだろう。
また、データを使った施策を実施した場合の費用対効果がわからないので投資できない。もしくは投資が高すぎて一部門では回収できないとの声も非常に多く聞こえてきた。
これに対して、当社では「すべてのデータを統合する前に、まずは1つの部門のデータを使って、新しい発見を探してみませんか?」もっと具体的に言うと「あなたの企業にとっての新しい顧客を見つけて見ませんか?」という提案をしている。実際に企業の1部門だけのデータだけでこのテーマの取組を実施するのは非常に難しいのは事実なので、他部門のデータの代わりに弊社のデータをご活用頂いている。また弊社は、企業の皆様がより深いマーケティング活動を行っていただけるようなインフラを整えてきた。以前発表した「Querida(クエリダ)」がそれにあたる。

【企業にご活用頂くデータ】
①4億ユニークブラウザ分のウェブ閲覧履歴(スマホ含む)
②20万人のパネルユーザによる詳細な意識・意向調査データ(自動車購入意向、買い物動向等)
③FAQサイトや専門サイト等のデータ
これらのデータを、企業の持つデータと組み合わせて分析を行っている。

では、前述した「新しい顧客を見つけてみませんか?」という提案について具体的に解説していく。
データを活用したマーケティングが盛り上がっているここ2年ほど多数の企業にデータドリブンマーケティング関連の施策のご提案をさせていただいた。しかしどこの企業もこちらの想定を超えて懐疑的。前述した社内での部門間の壁もさることながら、実際のデータの活用方法のイメージがわかない、もしくは活用できたとしても事業へのインパクトが小さいだろう、というものだ。このままでは、データドリブンマーケティングは進まないとちょっと焦り、改めて企業をまわりマーケティング課題を聞かせていただいた。その結果、どんな業種・どんな部門でも最終的には「新規の顧客が増えてくれたらいい」という思いを持っていることがわかった。データドリブンマーケティングの1つのテーマがこれで決まった。

しかし、既存データだけを使って新規顧客を見つけることは、CRMをしっかりやっているのであればどの企業も既にやり尽くしているだろうと考え、私たちは企業が持ちえないデータを使い新たな発見を作ろうとした。外部データを使って潜在顧客が外部にどれだけ潜んでいるのかをあぶりだし、その潜在顧客は一体どんな人なのかを定義することに挑戦したのだ。これは企業内データ・弊社データを合わせて分析を行い、「新規顧客になりそうな人のペルソナ」を明確にする作業だ。弊社の営業部門、マーケティング部門、データ部門が一体となって取り組んでいる。およそ10〜20のペルソナを最初に作りそれぞれの規模等を考え最終的には7〜10のペルソナが出来上がっている。ペルソナづくりには企業のフィロソフィー等の情報やマーケティング担当者へのヒアリングも行っている。結果、作り上げたペルソナは納得頂けていることが多く、新たな取組みがうまくいきつつあるのを実感している。
企業のマーケティングの根幹に関わることなので、企業名を出してのケースの紹介は難しいのだが、次ページで作成するペルソナのイメージを掲載しているので参考になればと思う。

さらに私共は、ここで作った「ペルソナ」を固定化させない。データから導き出したペルソナは本当に正しいのか?を検証する。そして、設定したペルソナに対して実際にバナー広告の出稿等のアクションを起こしてみて、本当に新規顧客となってくれるのか?他のペルソナよりも確度が高いのか?といったことを見ていく。ペルソナ自体も”アクチュアルデータ”を用いてPDCAを回していくことを行っている。
こうすることで、より企業にとっての新規顧客像がクリアになっていくと考えている。
この一連の作業を通じて、改めて企業のマーケティング課題にデータで向き合う方法論が見えてきた。

※この企業は、商品のプロモーションを行う際、デモグラや行動ベースでターゲティングを行ってきた。広告への反応が落ちてきたこともあり、改めてターゲット戦略を見なそうと考え、自社データのみならず他のデータを用いて分析を行った。

以上、「100万社のマーケティング」(宣伝会議 / 2015年3月号) 掲載原稿を一部改訂

柴田 貞規 データドリブンメディアマーケティングセンター データマネジメントプラットフォーム部長

1996年からネットビジネスに関わり20年。
サイト制作、クリエティブ開発、コンテンツ企画・編成、オンライン広告領域を幅広く経験。事業会社、ネット関連会社数社を経て、2007年に博報堂DYメディアパートナーズに入社。運用型広告(リスティング広告、アフィリエイト広告、DSP)の領域の責任者として、テクノロジーを活用した新たな施策の開発や、広告運用体制の構築・販売推進を行う。13年4月から現職。データマネジメントプラットフォームを活用し、様々な分析ディレクション、サービス開発、メディアプランニングなどの実績を重ねている。
得意分野は、デジタルマーケティングの施策立案、実行、PDCAのプロデュース。最新のテクノロジーやサービスを、広告主様の課題解決策に落としこむことも得意。
現在は主に得意先・媒体社のマーケティング課題に対して、どのようなデータを組み合わせて分析するのかを考え、解決のための施策を立案する、DMPの活用をプロデュースしている。
 日本のデジタル業界に精通し、今後のトレンドを読みながら戦略立案を行っている。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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