博報堂DYメディアパートナーズ メディア・コンテンツビジネスセンター クリエイティブ1部の「嶋田三四郎」と申します。
私は普段、メディア・コンテンツの特性を活かしたクリエイティビティを軸にした“統合コミュニケーションの創造”と、世の中・オーディエンスの潮流を起点にした“新しいコンテンツビジネスの開発”という2つの側面による「メディア・コンテンツビジネス」の推進を行っているのですが、今回は「僕らにとって“Cannes Lions”って何だろう?」と題しまして、「Cannes Lions」は、「今の広告業界にとって…どういう存在なのか?!」そんな視点のお話をしたいと思います。
「世間の反応とは違うのでは?」などのご意見もあるかと思いますが……あくまで、メディア・コンテンツ視点での私のフィルターを通したお話でありますので、「信じるか、信じないかは……あなた次第です!」ということで、ご了承いただけると幸いです。
■最近のカンヌ…モチベーションが上がりきらない?!説
「Fearless girl」「MEET GRAHAM」「THE REFUGEE NATION」「BOOST YOUR VOICE」といった作品が、数多くのアワードを受賞しました。
今年のカンヌでは全体的に、「社会問題を世の中に議論させる」「社会的弱者やマイノリティにアイデンティティを確立させる」といった壮大なテーマに対した「クリエイティビティ」が、高い評価を得ていると感じた訳ですが、この傾向に関しては…
「すごく分かります!でも…テーマが、デカ過ぎっす!」
「社会問題解決系は、日本ではちょっと無理じゃないすか?」
「なんかもうカンヌって…広告の領域越えすぎちゃってません?」
こういった意見のように、日々の広告コミュニケーション活動とは違いすぎるあまり…モチベーションが上がりきらないという声をよく聞きます。
※一方、「Cheetos Museum」とか…「安心するわー、こういうのを見たいっす!」という声はよく聞きますが(笑)
正直こういった気持ちに「同感」ですが、この「モヤモヤ」をどう払拭していけばいいのか…僕はこんな風に考えています。
受賞作品1つ1つが、どうだこうだという「学者的な解説」を理解しようとするのではなく、「共通項を探してみる」という「クリエイティビティの遊び」をするべき!と。
●例えば…
「Fearless girl」「MEET GRAHAM」「THE REFUGEE NATION」の共通項は?
→「銅像」「人形」「国旗」いずれもアウトプットのコアは「シンプルなモノ」だ!
●例えば…
「evan」「like my addiction」「the world biggest asshole」の共通項は?
→いずれもストーリーにあるのは「ひっくり返すオチ作り」だ!
※僕個人的には…「The Virtual Crush Billboard」「No Metro」「Google Home Whopper」という3つの作品で気づいた「音の無限な可能性」という共通項に注目してますが…
何故これが必要なのか?
この共通項探しはという遊びは「自分のクリエイティビティの源探し」につながるからです。
2017年だけでなく、過去の作品も含めて「自分が好きな作品」を5つ置いて…その共通項を探してみてください。
ユーモア性? デザイン性? 音楽性? など…自分が大事にしたいクリエイティビティが見えてきます。そのクリエイティビティを見極め、信じて、日々のワークに向き合ってみるのはいかがですか?
■セミナーで使われるキーワード…やっぱり使える!説
今年も、数多くのセミナーで色んな話がされていましたが、正直…今年僕が聞いたセミナーでは、「いわゆる総論」が多く…「なるほどー!目から鱗です!」的な「核論」が少なかった気がしています。でも、セミナーは、自分に都合がよくなるようなキーワード探しの場所ととらえると超使えます。そんな視点で…使えそうなキーワードをいくつかお届けしてみます。
1.Social goodからSocial solvingへ…
世の中が良くなる事の先として、世の中の課題解決まで考えるという意味合い。
「ソーシャルグッド」を使いたくなる時は…
「ソーシャルソルビング」って言った方が今っぽいですよ!
2.Touch people’s heart / Emotional connection / Relevant to audience
いわゆる、「共感」的な言葉。「共感」という言葉が平易になってしまった時こそ…
「生活者とのエモーショナルコネクションを創造」と言って見るのも手ですね。
3.Create the moment / Create the memory
今回の広告コミュニケーションを通じて、我々が目指すべき姿は…
世の中の人に「create the moment & create the memory」です!なんて言うと結構かっこ良く聞こえますね。
といったような日々の広告コミュニケーション活動で使えそうなキーワードが
カンヌにはたくさん転がっていますが、私が個人的に注目したのは、エンターテインメントフィールドのセミナーでのキーワードです。
「Creativity」「Innovation」といった広告業界系のセミナーで連発されるキーワードとは、まるで使っている言葉が違う事が驚きでしたが、以下の視点こそが、これからのコンテンツビジネスでは必要なのだと…今一度再確認しました!
1.Content ecosystem
とにかく「ecosystem」こそが重要と。
やはりエンターテインメントのフィールドでは、エンターテインメントを基盤にしたビジネスをして行く事が重要なので、単発的に「点」で捉えていくのではなく、中長期で「面」で捉えていくような「コンテンツを軸にした循環構造」の必要性が多く語られていました。
2.Want to pay
お金を払ってまでみたいかどうか?…
コンテンツビジネスには、この要素を絶対忘れてはいけないと。
3.Tech dies ideas for audience live forever
テクノロジーに頼りすぎてはダメという注意。
エンターテインメントコンテンツビジネスは、オーディエンスを第一に考え、そのオーディエンスが欲しい物を提供するのか…そのオーディエンスの想像を超える物を提供するか…というオーディエンスに向けたアイデアこそが起点であるべき。
以上が、私の目線で見えた「Cannes Lions 2017」ですが、結局重要なのは、今の自分にとっての「カンヌの価値」をしっかり決めたうえで、カンヌ情報に触れていくマインドセットだと思います。
アワードを取ることが今の自分に必要なのであれば、受賞作を徹底リサーチしたり、審査員のコメントをヒアリングしまくった方がいいですし、新しいビジネスチャンスを探ることが今の自分に必要ならば、カンヌに登壇している世界の企業とコンタクトを取ってみた方がいい。広告が好きで、世界の面白い作品を見たいというシンプルな気持ちならば、お酒でも飲みながらアーカイブをゆっくり観た方がいいし…など、自分なりの「Cannes Lions」の楽しみ方を見つけることこそが、「Creative Journey」の出発点なのではないでしょうか?
◆プロフィール
嶋田三四郎(しまだ さんしろう)
メディア・コンテンツビジネスセンター
メディア・コンテンツの特性を活かしたクリエイティビティを軸に、商品・ブランドコンセプト開発、広告キャンペーン開発、CM・グラフィック開発、テレビ・ラジオ等番組プロデュース、メディアPR、WEB・イベントプロデュース等生活者との全ての接点をメディアと捉え、企画をプロデュース・実行するチーム「concreat」を率いる。
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