レポート
セミナー・フォーラム
社会の課題にフォーカスし、チームで解決する ~AdAsia2017「妊婦手帳」セミナー
REPORT

2017年11月8日~10日の3日間、インドネシア・バリでアジア最大の広告カンファレンス「AdAsia2017」が開催され、博報堂DYメディアパートナーズの丸山安曇と、博報堂 タッチポイントエバンジェリストの皆川治子が登壇しました。

セミナーでは、博報堂DYメディアパートナーズの投資戦略局プラットフォームビジネス推進グループのチーム(実吉、丸山、宗、廣濱、逆井、浦田)が2013年からNTTドコモと共同で運用しているアプリ「妊婦手帳」、2016年からNPO法人ひまわりの会が主管となり博報堂DYメディアパートナーズとNTTドコモが共同運営している「母子健康手帳アプリ」について、事業のこれまでの歩みと今後のビジョンについて発表しました。当日の様子と反響について、丸山安曇がレポートします。

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■妊婦手帳のあゆみ ~社会の問題に向き合うことで生まれた事業

紙の母子健康手帳(当時は妊婦手帳)は1948年代に日本で発明され、現在は世界約40カ国で利用されています。そんな母子健康手帳の電子化は、インターネットや携帯電話、スマートフォンが普及しても、子どもの両親だけでなく、医師や自治体など多くの関係者が利用することもあり、進めることができなかったのです。

2011年の東日本大震災では、多くの命と共に、多くの母子健康手帳も失われました。母子健康手帳は単なる記録ではなく、母子の絆そのものであり、かけがえのないものであることがこの時、改めて認識されました。そして、母子健康手帳の電子化を求める声がより一層強くなりました。

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そんな経緯から、博報堂DYメディアパートナーズは民間企業としてこの問題にNTTドコモと協業して取り組み、試行錯誤を経て2013年に医師と妊婦をつなぐラーニングサービス「妊婦手帳」を発表しました。病院の医師と連携した妊婦手帳アプリは大きな反響があり、当時のアプリ市場でランキング1位を獲得し、多くのユーザーや医療機関からも支持をいただきました。

そして2016年、マタニティマークの普及を行ってきたNPO法人ひまわりの会とNTTドコモの協業が発表され、妊婦手帳のノウハウを十分に生かした「母子健康手帳アプリ」が誕生。このアプリでは、「母子の記録を守りたい」というニーズに応え、紙の母子健康手帳で記録できる全項目のクラウド上への保存を可能にしました。また、子育て家族向けの情報配信機能も充実させ、自治体から市民に対してプッシュ型の情報配信ができるサービス提供を開始しました。

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母子健康手帳アプリには、内閣府、全国知事会、全国市長会、日本医師会など多くの行政機関・団体から後援を頂いています。そして現在では、妊娠した際に地方自治体の窓口で、紙の母子健康手帳と一緒に母子健康手帳アプリも案内する自治体が増えてきています。母子健康手帳アプリが紙の母子健康手帳と同じように日本全国で利用されることを目指して、現在もサービスの拡大・向上に取り組んでいます。

■セミナーを終えて ~日本の母子健康手帳を世界へ

AdAsia2017の発表では、会場の外でも多くの質問が寄せられました。母子健康手帳アプリでは、全国の自治体・医療機関がサービスに参加できる仕組みを用意していますが、観客からは「どうやって自治体と連携したのか?」「病院と一軒一軒、連携しているのは本当なのか?」など、事業が今の状態に至るまでの具体的なアクションについて質問を受け、プレゼンでは伝えきれなかった事業創出のディティールを話すと改めて拍手をいただくことが出来ました。

セミナーの中で、「社会の課題に対して生まれた事業を、“継続させること”も広告会社の担う役割の一つだ」という話をしました。どんなに良い事業でも補助金など一過性の資金だけではいつか終わってしまいます。アジアでは補助金で始まった事業が継続できずに終わってしまうことが少なくありません。妊婦手帳・母子健康手帳アプリように、特定のユーザーに支持されるサービスを開発し、そこをメディア化して協賛収益を得るというモデルと実績は、非常に新しく、納得感を持って伝わったようです。

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そして実は、観客から一番質問されたのは「私の国にはいつ来るんだ?」でした。

日本で生まれた母子健康手帳は、デジタル化されスマートフォンアプリになることで国境を越えることが出来るようになりました。しかし、これはまだ準備が出来ただけの状態です。サービスが国を超えて利用されるようになるには、まずはその国の生活者をしっかりと理解しなければいけないと思います。生活者を理解し、その土地に合わせて機能やコンテンツをチューニングしていくことが、サービスを利用し続けてもらうためには重要だと考えています。

発表を通して、アジアの生活者の生の声に触れることができ、ニーズが存在することが発見できたことは私たちにとって収穫でした。そして、改めて妊婦手帳・母子健康手帳アプリの成長には、監修いただいている医療関係者、コンテンツ提供社、日々支援いただいている皆さまなど、社内外から多く協力をいただいていると実感しています。事業運営に携わる私たちにとって、事業の更なる成長が目的でありモチベーションです。近い将来、日本で生まれた母子健康手帳と一緒に、母子健康手帳アプリも世界で使ってもらえる日が来るように、チーム一丸となって今後もサービス改善に取り組みたいと思います。

◆プロフィール

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皆川 治子(みながわ はるこ)
博報堂 グローバルMD推進局 タッチポイントエバンジェリスト
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員

マスメディアからニューメディアにわたり、KPI開発、PDCA管理まで広くマネジメント。コミュニケーション全体を俯瞰する。直近ではデータによるコンテンツの配信分け、コンテンツとオーディエンスのマッチング分析、オーディエンスのナーチャリングモデル開発に携わる。マスメディア、デジタルメディア双方に通じるジェネラリストであり、テクノロジーにも精通。カンヌライオンズ2015年クリエイティブデータ部門審査員、アドテック、カンヌ、I-COM等グローバルスピーカー。

丸山 安曇(まるやま あずみ)
博報堂DYメディアパートナーズ 投資戦略局 プラットフォームビジネス推進グループ
ビジネスディベロップメントディレクター

デザイナーとしての地方TV局でキャリアをスタート。クロスメディアプランニングおよびUI / UXデザインを経験後、博報堂DYグループに転職、数多くの事業開発に携わる。メディア・クライアントのコンテンツを活用し、生活者が利用できる「サービス」というカタチで価値を提供することで、新しい「場」を作り出す。Cannes Lions Speaker, Cannes Lions Gold、Spikes Asia Gold、日本電子書籍大賞 グランプリ、Good Design Award、Kid Design Awardなど受賞多数。

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